みかん小説
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"「お父さんの同僚ですか?」と、夫の娘は微笑んだ" 第4話

と称して宅配便で送りしていた。

あれは引越しの準備などではなかったのだ。 男は最初から、退職を懐に入れ、私を無文にい形で京のまいから追いし、理恵母子の待つ町へ完全に移する計画をてていたのだ。 「定退職したら、やっとで暮らせる」 その甘い約束を、男は私と理恵さんの双方に、まったく同じ顔をして囁いていたに違いない。

ソファのでうずくまる夫を見ろしながら、私はハンドバッグの取っをきつく握りしめた。 退職を祝う華やかな宴の裏で、密かにめられていた男の設計。その勝なシナリオの全貌を、私は絶対に、ただ泣き寝入りしたまま見過ごすつもりはなかった。

控をた、私たちはホテルの最階にある静かなティーラウンジへと席を移した。

夜のを回り、客の姿はまばらだった。窓のには京の無質な夜景がたく広がっている。ガラス張りのテーブルを挟んで、私と奈緒さんが並んで座り、その向かいに修がさくなって縮こまっていた。

誰もをかないまま、めきった茶のカップだけがテーブルのに置かれていた。

奈緒さんは膝ので両を握りしめ、折、堪えきれなくなったようにく息を吸い込んでいた。その横顔には、父親の会社でのれ姿を誇らしげに讃えていたの面はどこにもない。

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ただ、元から世界が崩れっていくのを必に耐えている、傷ついた若い女性がいるだけだった。

「奈緒」

修が、掠れた声で囁くように呼びかけた。

「母さんには、余計なことは言わなくてよかったんだ。俺が、ちゃんと静岡に戻って説するつもりだったんだから……」

「余計なこと?」

奈緒さんは顔をげなかったが、その声には鋭い棘が含まれていた。

「ママに、パパにはずっと京に奥さんがいたって教えることが、余計なことなの? 私、今までずっと、パパは京の支社でで暮らして、苦労して私たちを養ってくれてるって信じてたんだよ。パパが帰ってくるたびに、ママがどれだけ嬉しそうに晩ご飯作ってたか、パパは忘れたの?」

修は唇を噛み、線をテーブルの目に落とした。

静岡。

その名を聞いた瞬、私の記憶の引きしが次々と音をててき始めた。

夫はここの、静岡にある協力や物流拠点の管理という名目で、に何度も幹線に乗っていた。「現がで、俺が直接監督に入らないと回らないんだ」と、眉に皺を寄せて張用のボストンバッグを詰めていた夫の姿。私はその背に向かって、いつも「無理しないでね」と栄養ドリンクを持たせていたのだ。

全部、嘘だったのだ。

男は幹線に乗って、もうつの庭へと通っていただけだった。

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「あの……」

奈緒さんが、恐る恐る私の方を見た。赤く腫れた目が、私の顔を伺っている。

「藤原さん、ですよね。パパと……本当に、ずっと緒に暮らしていたんですか? 別居とか、そういうことじゃなくて?」

「ええ」

私は静かに頷いた。

「主は週末のどちらかには必ず京のに戻っていましたし、張以のは毎朝、私が作った朝をべて会社へ通っていました。子供がいなかったから、お互い仕事に追われながらも、それなりに支えってきた夫婦だとっていました」

「そんな……」

奈緒さんの唇が震えた。

「だって、パパは私のの入学式にも、部活の最の試にも来てくれたよ。学に受かっただって、静岡ので緒にお祝いしてくれた……。じゃあ、あのパパが『京の仕事が片付いたから駆けつけた』って言ってたのは……」

「その期、主はいつも『方のちげで泊まり込みになる』と言ってを空けていました」

私の言葉に、奈緒さんは絶句した。

つのカレンダーが、ひとりの男の都の良い嘘によって、精巧にねわされていたのだ。

お盆や正はどうしていたのか。い返せば、夫は決まって「末は京の取引先の挨拶回りと残務処理があるから」と晦まで京に残り、がの途で「の現確認」と言って静岡へ向かっていた。

あるいはその逆のもあった。

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