"捨てられた整備士、沈黙の咆哮" 第17話
振でボルトの座面が削れ、ブラケットがしなり、属同士が擦れって隙を作り……そうやって、歪んだ体と『辻褄』をわせていたんです」
「の方が……辻褄をわせていた……?」
笹本のからこぼれたのは、もはや代な自学の用語ですらなくなっていた。
「はい」田はく頷いた。「という途方もないをかけて、このは、自らが負った傷と、自らの歪みと、仲直りをしていたんです」
榊原がハッと顔をげた。その老いた瞳が、田のく元をい入るように追っていた。
田は組みわせた両のうち、ののひらをわずかに斜めに傾けて見せた。
「そこへ、最の技術を持つ備士たちが、メーカーの基準通りの、狂いのない『正しい形』をした品のピストンやシャフトを組み込みました。品の部品は、寸分の狂いもない完璧な直角と平面を持っています。……歪んだ骨格のに、狂いのない完璧な部品を無理やり押し込んだら、体どうなるといますか?」
笹本は息を呑んだ。
、油と鉄に触れ続けてきた職であれば、その答えにき着くのに秒の躊躇もいらなかった。
「……わなくなる。全体が突っ張って、どこかに致命な無理がじる」
「そうです」
田は傾けたのひらを、元の位置へ戻した。
「特に、ディストリビューターの駆ギアと、クランクシャフトの回転を拾うセンサーの同期です。
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エンジンブロックそのものが、フレームのねじれによってコンマ数度だけ斜めにマウントされているため、クランクシャフトが回転する瞬に微な芯ブレが発し、点の期が正規のタイミングから決定にずれてしまうんです」
榊原の喉仏が、ゴクリとに激しくいた。
「は、んでいます。ですが……シリンダーので混気が最も圧縮され、爆発を待っているその瞬から、ほんの数ミリ秒だけ遅れてが散っているんです。だから、どれほどセルを回しても、初爆すら起きない」
事務所のに、完全な静寂が戻ってきた。
やがて、榊原がゆっくりと顔をげた。その両の瞳には、赤く滲むような涙の膜が張っていた。
「……では、私は」老の声は、枯れのように掠れていた。「私は、あのの晩の過ちの始末を……も先延ばしにしていただけだったのか……?」
その痛な問いかけに、笹本は何も答えることができなかった。
ただ田だけが、逸らすことのないまっすぐな差しで、老の瞳を見つめ返していた。
「……部品をいくら品に買い替えても、このは直りません。このの、ミリの歪みにわせた『専用の部品』を、ゼロから作るしかありません」
その言葉を聞いた瞬、笹本は弾かれたようにの最奥部へと線を向けた。
暗いの片隅、破れかけた古い油布を被せられたまま、何も眠り続けている、き父の残した台の作械――。
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そのの午、笹本は話帳をき、あちこちの部品商へ話をかけ続けるだけでを費やした。
自のクラシックカー部品相談窓に型式を伝えたところで、返ってくる答えは最初から決まっていた。『該当種の補修用部品は、に供を終しております』。
旧を専に扱う全国の解体やビンテージパーツの専にも片っ端から当たった。奇跡にデッドストックの純正部品を保管しているが軒見つかったが、送られてくる寸法データは、当然ながらメーカーの基準通りの「狂いのない正しい部品」だった。古部品を探したところで、結果は同じだった。
田が必としているのは、正規の形をした部品ではないのだから。
「……歪んだにピッタリう部品なんてものが、この世のどこかに都よく転がってるわけがねえだろうが!」
笹本は受話器を叩きつけるようにフックに戻し、を抱えて井を仰いだ。
「当たりだ! そんな歪んだ良品を、わざわざをして作るメーカーがどこにある!」
田は机の端に腰掛け、かれたノートの図面を見つめたまま、淡々とした声で言った。
「作れば、あります」
その言い方には、気負いも誇張も何ひとつなかった。ただ、「リンゴをから落とせば面に落ちる」