"捨てられた整備士、沈黙の咆哮" 第7話
舌のには、っぽい甘料のべったりとした甘さだけが残り、そのあとから喉の奥を刺すような、酸化した鉄に似た苦が追いかけてきた。
かれた元帳のい頁には、このが歩んできた数の栄枯盛衰が、無慈なアラビア数字の羅列となって刻まれていた。
かつて、昭の終わりから平成の初めにかけては、隣の農が所する軽トラや、元務のダンプカーが、朝番からの広い砂利敷きに何台も列をなして並んでいたものだった。先代と、油煙にまみれながら夜遅くまでインパクトレンチを鳴らし、景気の良い笑い声を響かせていた。
それが、沿いにさと速さを売りにした検専の型チェーンがするにつれて、顧客は潮が引くようにそちらへ流れていった。追い討ちをかけるように、のは子制御化がみ、メーカーのい期保証制度に囲い込まれて、町のる幕などどこにもなくなってしまった。
の暮れには、ついにリース契約していた載コンピューター診断の支払いが滞り、がけてからは運転資の借入を幾にもね、そして先――笹本はついに力尽き、来末での廃業を正式に決断したのだった。メインバンクと主な部品商への挨拶回りは、すでに粗方済ませてある。
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笹本は鉛を握り、今の払いの受領簿に、田に渡した分の当の額をき加えた。元帳の端に並ぶ残の数字が、またしだけ目減りした。
来末までに、のと建物を処分して、円でもく借を減らしておかなければならなかった。老の蓄えなど何ひとつないで、残されたを破産者としていつくばってきないための、これが正真正銘、最の猶予期だったのだ。
そのための貴な最のに、自分は体何をしているのか。
「……の会社が、あいつをクビにした理由も、分からなくはねえな」
誰もいない、え切った事務所ので、笹本はぽつりと独り言をこぼした。
こぼしてから、その言葉に含まれた酷な響きに、自分自でハッと息を呑んだ。
原オートサービスのような企業では、台の定期点検や備にかけられる標準作業は、分単位のマニュアルで厳密に管理されているはずだ。リフトに乗せ、点検し、オイルを抜き、類を作成して客に引き渡す。そのサイクルを何台と淀みなく回すことこそが正義とされる世界で、あの田のようながどのように扱われ、どんな線に晒されてきたか、像するのはあまりにも容易だった。
そして今、自分もまた、あの巨ディーラーの徹な管理職と全く同じ物差しを振りかざして、彼女のを邪魔者扱いしているのではないか。
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笹本は握っていた鉛を机のに放りすと、ちがってパチンと蛍灯のスイッチを切った。
暗に包まれた部ので、笹本は窓のの暗い空を見げた。
――だ。、週の期限を待たずに、彼女には辞めてもらおう。
「がない」という、誰もが反論できない絶対な理由を告げれば、彼女のプライドをこれ以傷つけることもなく、穏便に引き取ってもらえるはずだった。
ところが、翌朝。
い決を胸に秘め、笹本が軋むシャッターをガラガラと押しげた瞬、彼の目にび込んできたのは、の最も奥まった暗い角に置かれたままの、あの端田さんの軽自だった。
そしてそのに、作業着の袖をまくりげた田美紀が、微だにせず直していた。
「……昨の軽自、もう度だけ見せてください」
その声には、こののあいだに度も聞いたことのない、鋼のようなさと張りがあった。
今で終わりにしよう。そう告げるつもりで、すでに喉元までかかっていた言葉が、笹本のからこぼれ落ちることはなかった。田の瞳が、昨までとはまるで違っていたからだ。
いつもどこか申し訳なさそうに伏せられがちだったその瞳が、今はを宿し、笹本の眉を真っ向から射抜くように見つめていた。
「昨、組みげてからずっと気になっていました。