"末席の男が放った三百億の通告" 第30話
「……でも、私……!」
端の席から、エリの鳴のような声ががった。
「私、本当にパパに取引を止めてもらうつもりなんて……全然なかったんです……!」
「じゃあ、なぜ言ったんだ?」
俺は、エリの目を真っ向から見据えた。
同窓会の夜、俺は度も彼女の目を見て話さなかった。だが、今は逃げを与えずに見つめた。
「冗談で取引先の息の根を止めると脅すことが、員の嗜みなのか? そんな劣な冗談を言うプロフェッショナルが、この世のどこにするんだ?」
エリは言葉を失い、喉を痙攣させて線を自分の膝のへと落とした。
俺は胸ポケットから帳を取りし、挟んであったあの名刺を抜き取ると、裏面をにしてテーブルの央へと滑らせた。
「これも、冗談で済む話ですか?」
『げに来る、パパに通しとく』
会議のい蛍灯のので、その稚拙な丸文字が々しく晒された。
宮がちがり、名刺のへとみた。
「拝見してもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
宮は袋をはめた指先で名刺を裏返し、表面の肩きと裏面の跡を徹に確認した。そして型のデジタル端末を取りし、証拠として枚の写真を撮した。
「写しと原本が、完全に同であることを確認いたしました。ありがとうございます」
宮が席に戻る、エリはその名刺をただの度も見ようとはしなかった。
広告
見られるはずがなかった。自分が調子に乗って殴りきした恥部を、実の父親と、威圧しようとした相の経営陣の目で直できるほどの神経を、彼女は持ちわせていなかったのだ。
会議から、すべての音が消えった。
誰も、次にをくべき言葉を持っていなかった。
その言葉を持っていたのは、この部ので、俺ただだった。
、柴田にも、井にも、そしてき母にすら度もかさず、胸の奥底に秘め続けてきた真実の言葉。
それを伝えるべき相が今、目のに座っていた。
「……久取」
久取が、い面持ちで顔をげた。
「つだけ、取にお伝えしておかなければならないことがございます。今お話ししたこととは、流れているのさがまったく違うお話です」
「……どうぞ、お聞かせください」
俺は柴田の顔を見ることなく、まっすぐに久取を見据えて語り始めた。
「。王の、この町の支に、古のトントラックをたった台だけ持った、歳の世らずの若者が、融資の相談にやってきました」
柴田の呼吸が、隣で止まったのが分かった。
「担保になる産など何つない。万が返済が滞ったときに、が差し押さえられる資産など何つありませんでした。持参したのは、元の品加と結んだ、たった枚の運送業務委託契約と、きの粗末な資繰り表、そして――連帯保証となる母親の名だけでした」
広告
久取の瞳の奥が、微かに揺れいた。
「希望融資額は、百万円。当のその支の支は、若者が持参した融資申込を、度にわたって突き返しました。『ここが甘い』『この試算では通せない』と、度き直させました。そして、度目に提された類を受け取ったとき、その支は自ら稟議を作成し、本部の融資部へ掛けって融資を通してくださいました」
俺は息を吸い込み、告げた。
「――そのの支が、久取、あなたでした」
久隆史は、驚かなかった。
曜の夜に理由を読んだ瞬から、この名が俺のから告げられるのを、ずっと待っていたかのような、静かでい差しだった。
「……堀運送を、覚えていてくださったのですね」
久取は、ゆっくりと、首を横に振った。
「忘れるはずがありません」
その声は、もはや取としての儀礼なトーンではなかった。、埃っぽい方支の応接で、俺のきの帳簿を枚ずつ丁寧にめくっていた、あのいバンカーの声に戻っていた。
「私はあの、融資課の若い担当者を連れて、あなたのトラックを見にきました。式の古い古でしたが、荷台の傷んだ板が枚だけ、真しいものに張り替えられていた。あなたが『自分でサイズを測ってノコギリで切って打ち直した』と仰った。