"末席の男が放った三百億の通告" 第23話
松本の声はく、沈んでいた。昨夜、宴会の廊で見せた、勤めの愁を漂わせたあの声のトーンだった。
『同窓会のグループLINE、入ってるよな?』
「ああ、案内が来たから入ってはいるが、今は仕事がて込んでて度もいてないな」
『……久のやつがさ、今の昼から、とんでもないことをき込み続けてるんだ。俺はグループの管理者だから、メッセージを制削除する権限はある。だが、勝に消していいのか判断がつかなくて……まず、おに見てほしくて話した』
「分かった。今から確認するよ」
『頼む。見たら、また連絡くれ』
松本はそう言って通話を切った。切る直、『弘……』と度だけ俺の名を呼び、それ以は言葉をみ込んだ。松本自、幹事として、そして王の融資先に勤めるのサラリーマンとして、巨な嵐の予に怯えているようだった。
午過ぎ。
話の嵐をすべて留守番話に切り替えさせ、俺は京の自宅マンションへと戻った。
斎のデスクライトを灯し、たい緑茶をんでから、スマートフォンで同窓会のグループLINEをいた。
参加者百のうち、百ほどが参加している規模なグループだ。
昨夜の夜までは、「お疲れ様でした!」「懐かしかったー!」「また集まろう!」といった無難なや、次会の居酒での集写真で埋め尽くされていた。
広告
だが――今の昼分を境に、久エリによる連続投稿が、その平穏なタイムラインを暴力に蹂躙していた。
『今のパパの、朝からの預解約がたとかで本フロアが騒ぎなんだけど(笑)法営業部のたち、半泣きでり回ってるし! ……まさか、昨の弘じゃないよねー? 百億とか叩いてたし(笑)(笑)(笑)』
その投稿のには、岡崎や取り巻きの女による同調のスタンプや煽り文句が連なっていた。
『取の娘、怖すぎー!』
『例の弘君、昨のビビった顔見た? 制同じだった頃の貧乏オーラ、そのまんま残ってたよね! スーツも物の量販だったし! 田貞子も、図館で貧乏の方してればいいのにー。お似いのカップル(笑)』
つ目の投稿には、昨夜の宴会の末席で、膝のにを置いて静かに佇む貞子の横顔の写真が無断で添付されていた。取り巻きの女のどちらかが、盗み撮りした写真だろう。
『松本くんの会社、うちから資材の借りてるよね? 幹事なら、私のこの投稿、絶対に消さないでねー! 来の融資もよろしくね!』
分からまでのに、エリはて続けにこのつのメッセージを投稿していた。
それに対して、岡崎がすかさず茶々を入れている。
『百億はマジで爆笑したわ! あいつの会社、社員もいねえだろ!』
広告
さらに、名もいせない別の男のき込みが続く。
『弘のやつ、俺の隣の席だったけど、緊張してんのか料理ほとんど喉通ってなかったぞ(笑)』
侮蔑と嘲笑のスタンプがび交うタイムライン。
だが――その汚のようなやり取りの直に、たっただけ、まったく温度の異なるき込みが残されていた。
『久さん、それは言いすぎだとう』
投稿者名は、田貞子。
投稿刻は、午分。
その貞子のに対して、返信のメッセージはつもついていなかった。同のスタンプも、反論の言葉も、誰として寄せていない。
百もの同級がいながら、全員がそのを完全に無し、しないものとして素通りしていたのだ。
触れないこと――それが、この百のがした『解答』だった。
の埃っぽい教と、寸分違わぬ景だった。あの教でも、エリが傲に笑えば、取り巻きがそれに同調して囃して、残りの徒たちは厄介事を避けるために沈黙を守った。そして沈黙を守ることによって、接にイジメる側の共犯者となっていた。
百が集まったこのLINEグループは、あのの酷な教の縮図そのものだった。
俺はスマートフォンをデスクのに置いた。
この画面を、柴田に見せるつもりは毛なかった。
見せれば、実務に忠実な柴田は「内部の密報を私なSNSに漏洩させたな証拠として、理由に追加しましょう」