"末席の男が放った三百億の通告" 第15話
盆休みで方にいる役員には、話会議で参加させる段取りをつけたのだろう。
理由は切尋ねてこなかった。
柴田という男は、理由は朝の会議で聞けば分だと理解しているのだ。俺が夜にだけの指示を送るとき、そのにすべてが込められていることを、の付きいのでり尽くしていた。
もし母がきていたら、今夜の来事を聞いて何と言っただろうか。
『弘、そんならないことで、百億ものおをかすのかい?』
そう言って俺を叱っただろうか。
いや、母はおの話を切しないだった。父の借の連帯保証の欄に震えるで名をいたも、額の寡については度もにしなかった。
母がにしていたのは、ただつだけだった。
『弘、何をするにも、ちゃんとやりなさい』
その『ちゃんと』という言葉のを、俺は今夜、経営者としてのな決断ので貫こうとしていた。
「……弘君、次会、かないの?」
隣にっていた貞子が、控えめに尋ねてきた。
「かないよ。駅のホテルに部を取ってある。の朝番の幹線で、京へ戻るから」
「そっか」
貞子は自分の布製の提げカバンを抱きかかえるように胸に当てた。
「私も帰る。も、朝から図館だから」
午分、同窓会はおきとなった。
百の半が廊へと吐きされ、次会組は駅の繁華へ、帰宅組はタクシー乗りへと流れていく。
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廊を歩く、何かの同級が俺の肩をポンポンと叩いて通り過ぎていった。
「弘、百億はねえよな!」
「お、昔から変なところで頑固だったもんな!」
嘲笑混じりの言葉に、俺はただく笑い返しておいた。
俺と貞子は並んで歩き、ホテルの正面玄関の自ドアをくぐった。にると、の湿った夜が頬を撫でた。濡れたようにるアスファルトのに、駅ロータリーの灯がぼんやりと反射している。
「弘君」
タクシー乗りので、貞子がふいにを止めた。
「ん?」
「丈夫なの……?」
「何がだ?」
「……百億って」
貞子は、まっすぐに俺の瞳を見つめていた。
冗談だとって馬鹿にしている目ではなかった。かといって、盲目に信じ切っている目でもなかった。ただ、目のの男の言葉をどう受け止めるべきか、自分のので静かに測りかねているような、真摯な差しだった。
「丈夫だよ。嘘じゃないから」
俺はそう答えた。それで彼女をさせられるとったのだ。
だが、貞子はさく首を横に振った。
「そっちじゃなくて」
「……え?」
「って、無理してないかなって」
俺の喉が、言葉を失って詰まった。
百億という数字が本当なのかどうかを尋ねられるものとばかりっていた。あの円卓にいた全員が、その数字だけを見ていたからだ。岡崎も、取り巻きの女たちも、エリ自も、信じるにせよ嘲笑するにせよ、『百億』という常識れな数字のきさにしか識を向けていなかった。
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だが、田貞子は違っていた。
彼女は数字の寡など切見ていなかった。その数字をにせざるを得なかった、俺のの痛みを、ただ見つめていたのだ。
「……昔から、そうだな、おは」
俺がぽつりと呟くと、貞子はカバンの持ちをぎゅっと握り直した。
「何が?」
「みんな結果や数字ばかりを気にするのに、おだけは、いつだって俺自を配してくれる」
貞子はし首を傾げた。
「……変かな?」
「いや」
俺は駅の濡れたかりを見つめ、静かに息を吸い込んだ。
「すごく、助かってるよ」
貞子は何も言わなかった。言わないまま、く、静かに頷いた。
「無理はしてない。ってもいないよ。の朝、会社の仕事として、静に決断をすだけだ」
「うん」
貞子はもう度頷いた。その瞳には、俺の言葉を完全に受け止めたが宿っていた。
「それだけだから、何も配しなくていい」
「うん。……でも、ちゃんと寝てね」
貞子はそう言い残すと、タクシー乗りへと静かに歩きした。
夜に揺れる紺のワンピースのろ姿は、、机のにそっとノートを残して教をちっていった、あの放課の背と、まったく同じ速さだった。
ホテルの客に戻り、着を脱いでベッドのに放りした。