"夫が失明してから、私はもう明かりを消せない" 第10話
部は畳のワンルームで、具は最限のものしか置かなかった。
午。
呂からがり、髪を乾かした私は、ベッドの端に腰をろした。
静かな夜だった。 をるの音も、隣の活音も聞こえない。 かつてのあの部のように、何かが軋む音も、ドアの隙から差し込むの図もない。
ここには、私以の誰もいない。
私は壁に設置された、部の主照のスイッチを見つめた。
引っ越してきてからのヶ、私は夜、このかりを消すことができずにいた。 気を消せば、またあの暗ので、見えない誰かの瞳が私を探し始めるのではないかという迫観が、どうしても拭えなかったからだ。
毎晩、いを浴びながら、浅い眠りを貪っていた。 目のには隈ができ、療内科で処方された眠導入剤をんでも、胸のざわつきは収まらなかった。
私はベッドからちがった。
裸のまま、たいフローリングを踏みしめて歩く。 裏に伝わる確かなさとたさが、現実の輪郭を教えてくれる。
玄関へ向かい、ドアのサムターンを確認した。 のロックは、しっかりと平に固定されている。 チェーンも掛かっている。
部に戻り、クローゼットの扉をけ、が空であることを確認した。 カーテンをけ、窓のクレセント錠が閉まっていることを指で弾いて確かめた。
広告
誰もいない。
私の部には、私を脅かす男も、私の恐怖を糧にしてきようとする夫も、しない。
私は壁のスイッチのにった。
指先を、プラスチックのプレートに触れさせる。
臓が、微かにねた。 暗への恐怖が、背筋をチリチリといがってくる。
けれど、私はもう、誰かの都で暗に怯える必はなかった。 誰かが侵入するために消される灯りでも、誰かを拒絶するために点け続ける灯りでもない。
私はく息を吸い込み、ゆっくりと吐きした。
そして、自分の指先で、スイッチを押し込んだ。
パチン。
乾いた音が響き、部からすべてのが消えった。
濃密なが、瞬にして部を満たす。
私は目を閉じなかった。 見いた瞳のに広がる、純粋な黒。
そこには、私を追う線も、かれた扉の隙もなかった。
私はゆっくりとベッドへ戻り、掛け布団のに体を滑り込ませた。
シーツのたさが、よく肌に馴染んでいく。
私は静かに瞼を閉じた。
失われていた、本当の夜の静寂が、ようやく私のもとへと戻ってきた。