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"夫が失明してから、私はもう明かりを消せない" 第8話

「俺が悪かった。本当に馬鹿だった。おを怖がらせるつもりなんてなかったんだ。ただ、借が怖くて、おに見捨てられるのが怖くて……黒田の言う通りにするしかなかったんだ」

引越し業者の作業員が、寝から私のドレッサーを運びしていく。 ガタガタと輪の軋む音が廊に響く。

「許してくれとは言わない。でも、婚だけは……考え直してくれないか。俺、目が見えないんだよ。おがいなくなったら、俺、どうやってきていけばいいんだよ……」

弘がソファーからちがろうとした。 だが、元の覚がおぼつかないのか、テーブルの角に腰をぶつけ、無様にへと崩れ落ちた。

以の私なら、すぐに駆け寄り、彼のを引いて抱き起こしていただろう。

けれど今、私のは歩もかなかった。

にをつき、見えない瞳を彷徨わせながら、弘は私の音を探していた。

「美穂……どこだ? 美穂……」

その姿を見つめながら、私の胸の奥から、たい疑が再び首をもたげた。

警察への供述。 親への釈。 そして、私への懇願。

すべてが、「黒田に脅された被害者」としての言葉だった。

本当にそうだろうか。

あの夜、私の枕元からわずかセンチの距に、黒田を座らせていた男。 いを浴びせられた瞬、背の男のを隠し通そうと、必に顔を歪めていた男。

あの写真の弘の表には、脅迫に怯えるのなど、微もなかった。

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私はに座り込む弘のまで歩み寄った。

ウールカーペットは、すでに業者のによって剥がされ、たい板のフローリングが剥きしになっていた。 私の靴音が、コツ、とく響く。

弘が顔をげた。

「……美穂?」

「弘。つだけ、答えて」

私の声は、静かだった。

「あの夜、黒田さんは私の真横に座っていたわね」

弘の体が、ピクリと凍りついた。

「写真を送ってきたの。あなたがベッドの端に座って、そのすぐ隣に黒田さんが座って、私の寝顔を見ろしている写真」

弘の喉仏が、さくいた。

「黒田さんは、鍵で勝に入ってきたんじゃない。あなたが、玄関まで迎えにて、音をてないように寝まで案内したのよね」

「……あいつが、実印の所を教えろって脅すから……」

「違う」

私は夫の言葉を遮った。

「実印の引きしには鍵がかかっていた。黒田さんが本当に実印を奪うつもりなら、ドレッサーごと壊すか、私を脅して鍵をさせればよかったはずよ。来週が期だったんでしょう?」

弘は唇を震わせ、何も言えなくなった。

「どうして、あの男を部に入れたの?」

私は屈み込み、のの夫と線を同じさにわせた。 焦点を結ばない、濁った茶の瞳。

「どうして、私が眠っている姿を、あの男に見せたの?」

部のが、を打ったように静まり返った。

くで、引越しのトラックのドアがバタンと閉まる音がした。

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弘はを見つめたまま、微だにしなかった。 やがて、その肩が、刻みに揺れ始めた。

泣いているのかとった。

だが、違った。

彼の喉の奥から、ヒタヒタと、何かが漏れしていた。

笑い声だった。

乾いた、擦れた、引き攣ったような笑い。

「……見透かしたような顔をするなよ」

弘の声が、く濁った。 それは、、私が度もにしたことのない、え切った男の声だった。

彼が顔をげた。 虚ろな瞳が、正確に私の顔のあたりを捉えていた。

「おはさ。自分が聖女だとでもってたのか?」

背筋を、氷の刃で撫でられたような覚がった。

「目が見えなくなってからの、おが俺を見る目が、どれだけ耐え難かったか分かるか?」

弘はにをついたまま、嘲るように元を歪めた。

「『な弘さん』『私が支えてあげなきゃいけない弘さん』。おが優しく微笑みかけるたびに、俺は自分が、拾われたばかりの汚い野良犬みたいにえて吐き気がしたんだよ」

「……弘」

「俺は働けなくなって、おの料と障害で飯をわせてもらって、具の角には全部クッションを貼られてさ! ここは俺のなのに、俺はおの作った全な檻ので飼われてるだけの無能な置物だった!」

弘のから、どす黒いが泡を吹くように溢れしていた。

「黒田が来た、最初はのことばかり言われてがおかしくなりそうだった。

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