"夫が失明してから、私はもう明かりを消せない" 第7話
「警察の聞き取りに対し、彼は『すべて黒田に脅されて従っていただけだ』と供述しています。百万円の借のも認めました。ご実のご両親がパニックになっておられましてね。美穂さんに謝罪したい、度会って話しいたいと、何度も私の事務所に話がかかってきています」
私はテーブルので指を組んだ。
「会う気はありません」
「そうおっしゃるといました。ですから、今の交渉はすべて私が代理として引き受けます。婚姻関係の破綻を理由とする婚調の申して、およびマンションの財産分与と競売・任売却の続きをめましょう」
「あのは……どうなりますか」
「幸い、ペアローンの残債は売却益で相殺できる見込みです。ただし、弘さんの借は彼の特財産ですから、美穂さんが肩代わりする必は切ありません。あのマンションは売却し、諸費用を清算したの残額を折半することになります」
すべてが、法という徹な計算式に沿って解体されていく。
がかりで背負うはずだったのローンも、弘のために施したバリアフリーのも、すべては数字に還元され、消滅していく。
「……美穂さん、つだけ確認させてください」
藤原弁護士が、鏡の奥から静かに私を見つめた。
「私物を引き揚げるため、度だけマンションに入る必があります。
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引越し業者を配しますが、弘さん側にもち会いの権利があります。顔をわせることになりますが、丈夫ですか」
私はほんのしだけを置いた。
そして、さく頷いた。
「はい。会わなければいけないとっています」
逃げるためではない。 あの男の顔を、最に度だけ、ので確かめる必があった。
翌週の曜。
午、曇りの空の、私は引越し業者のトラックとともにマンションのにった。 藤原弁護士と、活全課の制警官が、私の隣に控えていた。
エントランスのオートロックを、しく作った鍵で解錠する。 エレベーターが静かに昇し、見慣れた廊にりった。
玄関のにち、ロックをす。
ドアノブを押しげると、い空気が漏れしてきた。
内は、暗かった。 カーテンが閉め切られ、ゴミと湿気、それにめ切ったコンビニ弁当の容器の匂いが混じりっていた。
リビングに入ると、ソファーのに、弘が座っていた。
週よりも、らかに痩せていた。 髭は伸び放題で、着古したスウェットの襟元はよれていた。 両親が面倒を見に来ていると聞いていたが、部のの惨状を見る限り、の回りの世話すら満に受け入れられていないようだった。
奥のダイニングテーブルには、弘の母親が座っていた。
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私の顔を見るなり、義母は弾かれたようにちがり、々とをげた。
「美穂さん……本当に、本当に申し訳ありませんでした……! 弘が、こんな馬鹿なことを……」
義母の声は震え、涙で滲んでいた。 かつては品で、私に対しても礼儀正しかっただ。その髪の混じったを見つめながら、私は静かに言った。
「お義母さん、をげてください。先からお聞きになっている通り、今は私の私物を運びすだけです」
藤原弁護士が義母にづき、別で類の確認を促した。 が隣のへ消えると、作業員たちが際よく、私の荷物が収められた段ボールを運びし始めた。
リビングに残されたのは、私と、ソファーのの弘だけだった。
弘は微だにしなかった。 膝のに置かれた両は、爪がくなるほどく握りしめられている。
「……美穂」
掠れた、湿った声だった。
「荷物、持ってっちゃうのか」
「ええ。必なものは全部」
私はリビングの棚から、自分の本やCDを段ボールに詰めながら答えた。 声には、何の抑揚も込めなかった。
「……黒田は、もう来ないよ」
弘が言った。
「警察にこっぴどく絞られたらしい。携帯も番号を変えさせられた。借も……親父が退職を崩して、なんとか括で返済する目処がついたんだ」
私はを止めず、背を向けたまま作業を続けた。
「そう。よかったわね」
「だから……もう、危ないことは何もないんだよ、美穂」
弘の声が、僅かにずった。