"百日祝いを門前払いされた娘に、24年後届いた祖母の手紙" 第13話
親戚ので回覧されていたという、『灯ちゃんを救う支援のお願い』と題された文面の画像だった。
その文面を読んだ瞬、私の背筋にや汗が伝った。
フォントの選び方。 無駄に改を用する癖。 「ご配」「衷より」といった、若いが無理に取り繕ったような自然な敬語の使い方。
見覚えがあった。 祖母から届いた、あのの文面と、言い回しの癖が完全に致していたのだ。
祖母のあの達な文字。 あれは、祖母が自分で考えた文章ではなかった。 悠がいたきを、祖母がそのままなぞって清しただけだったのだ。
『命のあるうちに、どうしても度だけ、私のい初孫であるあなたに会いたいのです』
あの涙を誘うような文すら、悠が計算ずくで用した台本だった。 祖母の孫に会いたいという老いぼれたを餌にし、私をあのに引きずりすための、精巧な罠。
「……全部、繋がった」
私はスマートフォンの画面を伏せ、く息を吐きした。 あのには、最初から誰として、私へのなど持っているはいなかった。 父も、弟も、そしてあの祖母すらも。 全員がグルになって、私の名をい物にしていたのだ。
残りの百万円の送が差し止められたことで、佐久の資繰りは完全に破綻したようだった。
そのの夜、実のアパートで母と夕の片付けをしていると、母のスマートフォンが鳴った。
広告
画面に表示されたのは、登録されていない固定話の番号。 母がスピーカーにして通話ボタンを押すと、受話器の向こうから、ひどく焦り、苛った父の声が響いた。
『……美紀か』
母は眉つかさず、淡に応じた。
「何の用ですか、佐久さん」
『頼むから、親戚に変な吹き込みをするのをやめてくれ! 叔父さんたちが急に支援の支払いを止めて、騒ぎになってるんだ! お、灯に何を吹き込んだんだ!?』
父の鳴り声は、かつての余裕に満ちた紳士の仮面を完全に脱ぎ捨てていた。
「吹き込むも何も、事実をお伝えしただけです。灯は健康ですし、あなたに募を頼んだ覚えもありません」
『うるさい! 親族の助けいの話に、いきなり弁護士を噛ませるなんて常識がないぞ! 世体がどうなるか分かってるのか!』
相変わらずの「世体」。 自分たちの犯罪為を棚にげて、体面ばかりを気にするその醜悪さに、吐き気がした。
『……おい、美紀。取引をしよう』
に、父の声のトーンがく、湿り気を帯びたものに変わった。
『お、昔の養育費のことでまだんでるんだろ? 分かってるよ。俺も悪かったとってる。だからさ……百万円す』
居の空気が、凍りついた。
『百万円、括で払う。公正証を作ってもいい。その代わり、過の教育費のことは切問にするにサインしろ。
広告
そして、来週の寿宴には、灯を何事もなかったように席させろ。それで打ちだ。おにとっても悪い話じゃないだろう?』
父は本気で、それが寛な提案だと信じ込んでいるようだった。 百万円で、過の百万円の横領と、現形の詐欺未遂をもみ消そうとしている。 息子の百万円の借を隠し通すために。
母は、さく息を吸い込んだ。 その表には、りすら浮かんでいなかった。 ただ、完全に汚物を見るような、え切った蔑みだけがあった。
「お断りします」
『なっ……! おい、美紀! 百万だぞ!? おがパートで何働けば稼げるとってるんだ!』
「佐久さん。あなたが私に支払うべき養育費があるなら、それは過の調調に基づいて、法に正当な続きで請求します。それと、あなたが親戚から灯の名を使って騙し取ったおは、まったく別の問題です」
母の声は、凛としていた。 切の揺らぎも、妥協もなかった。
「おでを塞いで、娘を犯罪の共犯者に仕てげるような真似に、母親が乗るわけがないでしょう。度と話してこないでください」
『待て! 美紀! 悠はまだ若いんだ! あいつの途を潰す気か! 灯だって姉貴なら――』
プツリ、と母は通話終ボタンを押した。
部のに、い沈黙が落ちた。 けれど、母の背筋はすっきりと伸びていた。
私を振り返った母の瞳には、切の悔のはなかった。