"百日祝いを門前払いされた娘に、24年後届いた祖母の手紙" 第2話
母の笑顔はどこか引きつっていて、抱きしめる腕には痛々しいほど力がこもっていた。
「……同じ、写真?」
声がかすれた。 母のした写真には誰もいなくて、祖母のの写真には、たちがぎっしりと並んで笑っている。
「同じじゃないわ」
母の声は、驚くほど静かだった。 けれど、その静けさの奥に、分の凍りついたりが潜んでいるのが痛いほど伝わってきた。
「私のほうの写真が、本物よ」
母は座布団のに正座し、静かに語り始めた。
〇〇、初。 百を迎えた私のために、おい初めの儀式をする約束になっていた。 所は世田にあった父の実。
母は朝のに起き、娘がべ物に困らないようにと、縁起の良い材を買い集めて仕込みをした。 豆を煮て赤飯を炊き、蛤の吸い物を作り、何もから築の魚に頼んでおいた派な鯛を焼きげた。
すべてを箱と祝い膳の器に詰め、当乗っていた軽自に積み込み、私をチャイルドシートに乗せて発しようとした、そのだった。
固定話が鳴った。 ると、祖母の澄の、淡な声だった。
『美紀さん? 今は急にがちゃってね。お祝いは止よ。来なくていいから』
それだけ言って、こちらの返事も聞かずに話は切れた。 母は受話器を握りしめたままち尽くした。
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けれど、何もかけて作った料理がある。 何より、娘のたった度きりの百祝いだ。 体調が悪いなら、顔を見せて料理を置いてくるだけでもいい。 そうい直した母は、泣き止まない私を抱いて、をらせた。
父の実のに着いた、扉は固く閉ざされていた。 インターホンを鳴らすと、数分経ってから、チェーンをかけたまま玄関のドアが数センチだけいた。
隙から顔を覗かせた祖母は、など微もなさそうな、完璧な化粧を施した顔をしていた。 着ているのは用の豪奢なスーツ。
『……何の用? 来なくていいって言ったでしょう』
『お義母さん、お料理だけでも召しがっていただきたくて。それに、灯のお顔をしだけでも……』
母が必にをげると、祖母はあからさまに舌打ちをした。
『所迷惑だから、声をさないでちょうだい。これから事な用事があるの。男の子の跡取りならともかく、たかが女児の百祝いくらいで、いちいち騒ぎしないで』
バタン、と目のでドアが閉められた。 鍵が内側からカチャリと掛かる乾いた音が、閑静な宅の通りに響いた。
母は、抱いた赤ん坊――私を落とさないよう、震える腕に力を込めて、に戻った。 ハンドルに額を押し当てて、声をさずに泣いたという。
その、母の実の妹――私にとっての叔母が、配してアパートに駆けつけてくれた。
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誰にも見てもらえなかった祝い膳を並べ、め切った鯛のに座る母と私を見て、叔母は涙を浮かべながら言った。
『お姉ちゃん、写真だけでも撮ろう。灯ちゃんがきくなった、ちゃんとお祝いしたんだって残してあげなきゃ』
そうして叔母のカメラで撮られたのが、母のアルバムにある写真だった。
「……じゃあ、あの写真の父や祖母は?」
私の問いに、母は祖母から送られてきた写真を指先でトントンと叩いた。
「から、あのたちが成したのよ」
「成……?」
「ええ。あの、お父さんが度だけアパートに荷物を取りに来たの。その、せめて父親なら娘の成を見てほしいとって、この焼き増し写真を枚渡したわ。……まさか、こんなに使われるなんてわなかったけれど」
母の言葉を聞きながら、私は祖母の写真を蛍灯に透かしてみた。
よく見ると、母の肩の輪郭と、背につ父のスーツの境界線が、わずかに自然にぼやけている。 畳の目の角度も、母の座っている部分と、祖母たちの元とで微妙に狂っていた。
誰が、何のために。 もの写真を切り貼りしてまで、偽りの「された証拠」を作りげたのか。
「お母さん、父と……佐久修司と、直接会ってみる」
私がそう言うと、母は目を見いた。
「灯、危ないわ。あのたちが何を考えているか分からないのよ?」
「だから確かめたいの。も放っておいたくせに、どうして今さらこんな嘘の写真まで送ってきて、私を呼びそうとするのか」