"ローンを完済した私に、義母は「家なら売った」と言った" 第13話
相が何を考え、どこまで夫の嘘に加担しているのか。 それを見極めずに、これからの沼の交渉を戦い抜くことはできない。
指定されたのは、宮駅のシティホテルのラウンジだった。 曜の午。周囲はお見いや商談の客で適度にざわめいている。
約束の分、奥の席で待っていた私のに、の女性がにづいてきた。 ベージュの控えめなトレンチコートに、仕てのいいパンツスーツ。 派な化粧も、ブランド物の見せびらかしもない。 商社の事務職らしい、清潔のある、けれど酷くやつれた顔の女性だった。
「……岸本様の、奥様でしょうか。おをいただき、本当にありがとうございます」
々とをげたそのは、席に着くなり、膝ので両をきつく握りしめた。 指先が、刻みに震えている。
「単刀直入に伺います」 私はにもつけず、静かに切りした。
「どうして私に直接連絡を?」
浦織は、息を詰まらせるようにしてバッグから分いクリアファイルを取りした。 テーブルのに置かれたのは、あのさいたま内のマンションの売買契約と、宅ローンの返済計画表だった。
「彦さんから……奥様が弁護士をてて、私のマンションの仮差押えを申してようとしていると聞きました」
「ええ。申しての準備をしています。
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あのマンションの千百万円は、私たちがかけて築いた自宅の売却ですから。当に移転された夫婦共財産の保全です」
私の言葉に、織さんは顔を張らせ、首を激しく横に振った。
「私は……騙されていたんです」
掠れた声だった。
「彦さんからは、奥様とはとっくに婚姻関係が破綻していて、完全な庭内別居だと聞いていました。婚のも実質に成していて、あとは期を見計らって類をすだけだと。古いを売ったおも、奥様には分な活費と将来の補償として渡してあって、お互いに納得ので活の準備をめていると……そう言われていたんです」
「納得?」
乾いた笑いが、喉からこぼれそうになった。 胸の奥から、たいりがじわじわとせりがってくる。
「織さん。私は先週の曜まで、自分が目の最の宅ローンを払っていると信じ込まされていました」
織さんの目が、見かれた。
「毎、私の万円のパート代から、きっちり万円。夫に言われるがまま振り込み続けてきました。先週、最の万円を振り込んだそのに、義母から聞かされたんです。『このはからの持ち物で、には追いされる』とね」
「……え」
「リースバックです。夫はにを売り、残債を払った残りの半を、あなたへの千百万に充てた。
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私はただの定期借に成りがった自宅で、夫に騙されて賃の穴埋めをさせられていたのよ。の退通すら、夫は私に隠していました」
織さんの顔から、急速に血の気が引いていった。 テーブルののアイスコーヒーのグラスに触れようとした彼女の指が、カタカタと音をてて震える。
「そんな……嘘……。彦さんは、奥様にはしい賃貸の契約も渡してあるって……」
「円ももらっていません。夫が提示してきたのは、解決百万円で全財産を放棄しろという切れ枚です」
沈黙が、くのに落ちた。 周囲の談笑が、ひどくくに聞こえる。
織さんはを抱え、唇をく噛み締めた。 けれど――。 数秒、彼女は顔をげた。 その瞳には、罪悪と同に、自分自の活を守らなければならないという、現実な怯えと防本能が宿っていた。
「奥様のおっしゃることは……理解しました。彦さんの卑劣さには、言葉もありません。でも……」
織さんは、売買契約のページを私のに突きした。
「このマンションには、私の全財産が入っているんです。私が代から必に貯めてきた自己資百万円と、私の単独名義で組んだ千百万円のローンです。彦さんからの千百万がなければ買えなかったのは事実ですが、登記もローンも私の名です。
ここを差し押さえられて競売にでもかけられたら、私は職も信用も、これからのもすべて失います」