"ローンを完済した私に、義母は「家なら売った」と言った" 第11話
「関係あるさ」 夫はリビングへ入ってくると、テーブルのの査定をチラリと見た。
「千百万か。まあ、そんなもんだろうな。おのパートの稼ぎじゃ、百パーセント逆ちしたって買えやしない」
悔しさに唇を噛み締める私に、夫は信じられない言葉を投げかけてきた。
「……伝ってやってもいいぞ」
「……は?」
を疑った。 夫は腕を組み、殊勝な顔を作って見せた。
「俺もな、し考えたんだ。んだを、赤のにけ渡すのは忍びない。おがそこまであのに執着してるなら、俺が買い戻しの資を用ててやってもいい」
臓が、トクンとさくねた。 え……? どういうこと? この男が、私を助ける? 罪悪から……? しは、の私に対する申し訳なさが芽えたというのか?
「彦さん……本気で言ってるの?」
「ああ。本気だ。売却代の残りと、俺の退職の借り枠を使えば、なんとか資は面できる。このをおの名義にしてやることも能だ」
夫はそう言って、ポケットから枚の折りたたまれたを取りした。
「ただし、条件がある。これがその覚だ。よく読んでおけ」
テーブルのに置かれたそのを、私は縋るようないでに取った。 もしかしたら、最悪の結末を回避できるかもしれない。 が残るなら。私の居所が守られるなら。
けれど――。 そのにびっしりとかれた条項を読みめるうちに、私の指先から血の気がサーッと引いていった。
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第1条:甲(彦)は、本件建物の買い戻しに必な資を拠する。 第2条:乙(澄子)は、甲の貞為に関する慰謝料請求、および浦織に対する求償権を含む切の銭請求を放棄する。 第3条:本件建物の買い戻し完、所権は乙に移転する。 第4条:乙は、甲の母・静の居権を終にわたり無償で保障し、常の活介護および療養護を誠実に履するものとする。 第5条:甲は、本件建物から退し、居での活を始する。
文字が、歪んで見えた。 喉の奥が引き攣り、吐き気が込みげてきた。
「……これ、何?」
声が震えていた。 夫は悪びれもせず、ソファに座って煙にをつけた。
「読んで字の如くだ。おはが欲しい。母さんはむ所が欲しい。織のマンションには母さんを連れていけない。だったら、おがこのに残って母さんの面倒を見るのが番理だろうが」
煙のの煙が、私の顔にかかる。
「おはをに入れられるんだぞ? 名義もおのものにしてやる。その代わり、織のことはもうをすな。慰謝料も請求するな。母さんの面倒を最まで見ろ。俺は軽になって織と暮らす。全員にとってウィンウィンじゃないか」
「ウィン……ウィン……?」
眩暈がした。 この男ののには、どこまでっても自分自の都しかないのだ。
織に同居を拒絶され、きを失った母親。
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老ホームに入れれば何百万円もかかる厄介な老親。 それを、私に「を買い戻させてやる」という甘い罠で釣り、無償の終介護士として押し付けようとしているのだ。 しかも、自分の倫の慰謝料も、織へ流した千百万の追及も、すべて帳消しにさせたで。
「澄子さん……!」
リビングのドアがき、義母がすりで入ってきた。 昼の怯え切った表から転、その顔には卑屈な笑みが張り付いていた。
「いいじゃないの、この話! 私とあんた、も緒に暮らしてきた仲じゃない! 私ね、本当はあんたのこと、実の娘みたいにってたのよ? ちょっと厳しくしたのも、あんたをってのことだったのよ」
義母は私の腕にすがりつき、皺だらけので私のを擦った。
「彦がいなくなったって、女でこので暮らせばいいじゃない。私のだってしはあるんだから。ね? 買い戻しましょうよ。私の面倒を見てくれたら、私がんだら遺産だってあんたに全部あげるから!」
実の娘。 緒に暮らした仲。
その言葉を聞いた瞬、私ので、何かが音をてて千切れた。
「……お義母さん」
私の声のたさに、義母のがピクリと止まった。
「実の娘のむを、に黙って売り払う母親が、どこの世界にいるんですか」
義母の息が止まった。
「私が毎、爪にをともすようにして万円を振り込んでいた、あなたはこのが売れたことをっていた。