"十二年育てた姪に「人生を奪われた」と告発された" 第9話
ゆっくりと振り返る。 メイクの完璧な顔に、わずかな苛ちが浮かぶ。
「何言ってるの、結。もう先方と程も調してるのよ。あなたのThreadsのフォロワーも増えてるし、今が番――」
私は、に持っていた企画をカウンターのに叩きつけた。 乾いた破裂音が響く。
母の線が、のに落ちた。 『2026114』 その数字を認めた瞬、母の喉仏がさくした。
「……何よ、勝にの類漁ったの?」
「って、何?」 声がかすれた。 喉の奥が引き裂かれるように痛い。
「私、まだ川越にいたよ。京に来るなんて決めてもいなかった。Threadsのアカウントだって作ってなかった! なんでこのに企画があるの? なんで私の台まで、全部あらかじめいてあるの!?」
母は数秒、私を無言で見つめていた。 揺を隠すように、ボトルのをむ。 そして、え切った声で言った。
「準備よ」
「……は?」
「当たりでしょう。あなたが京にてくるって決めてからいたんじゃ、メディアの枠なんて取れないわ。私はビジネスできてるの。チャンスを逃さないように、もって企画を通しておくのは当然のリスクヘッジよ」
「リスクヘッジ……?」 言葉のが、ので噛みわない。
「私のだよ!? 叔母さんに嘘をつかれてたのも、お母さんに会えなかったのも、私のだよ! それを……自分の仕事の宣伝のために、最初から計算して私をらせたの!?」
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「いい加減にしなさい!」 母がグラスをカウンターに叩きつけた。 甲い音が内に響き渡る。
「誰のおかげで京の私学に通えてるとってるの!? この青のマンションの賃、誰が払ってるの!? 学費も活費も、全部タダでに入るとってたの!?」
母の目が、血っていた。 座のサロンで見せる優雅な微笑みは、完全に剥がれ落ちていた。
「私はね、あなたを育てる義務なんてもうないのよ! 歳になったんだから、法にはよ。それでも京に呼んで、綺麗な部を与えて、学にかせてあげてるの! それだけの投資をしてる母親に、し協力することの何が悪いの!?」
投資。 その文字が、私の胸を鋭く貫いた。
「川越のあの子に騙されてたのは事実でしょう!? を隠されてたのも事実よ! 私はそれを世に正しく伝えたいだけ! それが嫌なら――」 母はたく顎をしゃくった。 玄関のドアを指差す。
「今すぐ荷物をまとめて、あの川越のボロに帰りなさい。あの子の脛でもかじって、印刷の事務員としてきればいいわ」
臓の鼓が、の奥で乱打する。 元が崩れ落ちていく覚。
叔母のには、戻れない。 あんな酷い言葉をThreadsにき連ねて、弁当袋を突き返して、拒絶した所に、どの面をげて帰れるというのか。
でも、ここにも、私の居所はなかった。
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母が欲しかったのは、娘の私じゃない。 「毒親から娘を取り戻した、美しく能な母」という、完璧な板だけだった。
「……ていくよ」 自分の声とはえないほど、く乾いた声がた。
「え?」
「今すぐ、ていく」
私は部に戻り、クローゼットからスーツケースを引きずりした。 母が買ってくれたいには切を触れず、川越から持ってきた着古したと、学の教科だけを詰め込んだ。 引きしの奥から、叔母が送ってくれた真しい通帳を掴み、ポケットにねじ込む。
リビングを横切る、母は腕を組み、ややかな目で私を見ろしていた。 「どうせには泣きついてくるわよ。京でできていけるわけがないんだから」
私は振り返らなかった。 ドアを閉める瞬の属音が、私の背をく弾いた。
夜の過ぎ。 線に乗り、学の同級の真奈のアパートへ転がり込んだ。 古田にある、賃万円の呂なしワンルーム。
「結、どうしたの急に」 すっぴんにジャージ姿の真奈は、呆気に取られながらも、カップ麺用の湯を沸かしてくれた。 部の隅に置かれた万。 狭くて、湿気があって、でも、嘘の匂いはしなかった。
「ごめん、だけ置かせて。絶対迷惑かけないから」 「いいけどさ……親と喧嘩?」 「……うん。ちょっと、いろいろあって」
その夜、私は真奈のベッドの脇のに毛布を敷いて横になった。
井のシミを見つめながら、もできなかった。