"彼女は毎日母を世話し、毎週夫と夜を過ごす" 第4話
「健司さんから……『妻とは何もに終わっている』って聞いていました。お母様の介護も、美咲さんが何もしてくれないから、自分がで抱え込んで限界なんだって」
私のので、何かがプツンと音をてて切れた。
「……は? 何言ってるの?」
「でも、違いました」
奈緒さんは、私の乱れた髪や、目のの濃い隈、荒れ果てた元に線を落とした。
「美咲さんが、で全部やってたんですね」
「同のつもり? ふざけないで。棒猫のくせに、被害者面しないでよ!」
を抑えきれず、鋭い言葉を投げつけた。 だが、奈緒さんは怯むどころか、さらに信じられない言葉をねてきた。
「健司さん、私の部に来ると、いつもお母様の介護の練習をしてたんです」
の裏から、すうっと血の気が引いていく。
「……練習?」
「シーツの交換のやり方とか、ベッドからの抱き起こし方とか……私に教えてくれって。お母様を傷つけないように、に移乗介助ができるようになりたいからって、何度も私の体を使って練習してたんですよ」
嘘だ。 息が止まる。
「あの、言ってたんです。『母さんは根と菜の噌汁が好きで、し甘めの噌じゃないとまないんだ』って。『昔から背を流すときは、しめのお湯が好きだった』って……」
奈緒さんの声が、くのトンネルのから響いてくるように聞こえた。
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「健司さん、ってたんですよ。お母様の好きなものも、介助のコツも、全部。……私、てっきりあのがでお母様をお世話してるんだとってました」
目のが、真っ暗になった。
あのは、っていた? 母が甘い噌を好むことも。 い湯が好きなことも。 移乗介助のやり方も。
「おがやった方がい」 「俺は器用だから、お袋に嫌がられるんだ」
そう言って、汚れたシーツから目を背け、夜に徘徊する母を放置して寝に逃げ込んでいた、あの夫が。
私のでは徹底して「無能な夫」を演じ続け、介護の全責任を私に押し付けながら。 若いのでは、老いた母親を健気にう「優しい息子」の顔をして、取り取り介護を学んでいた?
私のの結婚活は、何だったのか。 私が眠を削り、キャリアを削り、ボロボロになりながら母の排泄物を片付けていたあのは、体何だったのか。
奈緒さんは、私の青ざめた顔をじっと見つめ、最にポツリと言い残した。
「美咲さん。健司さん、をてから度も私の部に来てくれません。話も、着信拒否されてます」
たい沈黙が、玄関を支配した。
「……あのは、私とお母様を使って、体何をしたかったんでしょうね」
カチャリと、静かに玄関のドアが閉まる音がした。
残された廊で、私は崩れ落ちるように膝をついた。
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喉の奥から、乾いた笑いがこみげてくる。
あの男は、介護ができなかったんじゃない。 最初から、やる気がなかっただけだ。 私を都よく使い潰すために、「できない夫」の仮面を被り続けていただけだったのだ。
その、ポケットのでスマートフォンがく震えた。
画面に表示されたのは、てったはずの夫からのメッセージだった。
『お袋の具はどうだ? 奈緒ちゃん、ちゃんと来てるだろ。の夕方、必な類を取りに瞬だけに戻るから。おは顔をわせたくないだろうから、留守にしておけよ』
画面を睨みつける私の瞳の奥で、たい炎が静かに灯った。
域包括支援センターの相談は、午の差しが入っているのに、どこか暗かった。
机を挟んで座るケアマネジャーの女性が、困ったように眉尻をげている。
「さん、お気持ちは分かります。ですが……急なヘルパーの変更やデイサービスの再は、お母様の状態を考えると慎になった方がよろしいかと」
「分かっています。でも、どうしても今の体制を変えたいんです」
喉の奥が引き攣るのを悟られないよう、膝ので握りしめたバッグに力を込めた。
夫の倫相に、実の母の体を拭かせている。 そんな狂った現実を、このでぶちまけられるはずもない。
「しいプランを組むにしても、これまでの経過を確認させていただく必があります。
特に、半の転倒事故の詳細ですね。骨折の事故報告や、当の主治医の退院サマリーはお元にありますか?」