"午前二時、ホテルから部屋を替われと言われた" 第15話
「理さんが、私の代わりになって殺されたら、私、自分を許せない! あのは、理さんが所を言わないなら、理さんの会社も、活も、精神も、全部ズタズタにして追い詰めるつもりよ! そんなの……そんなの、絶対に嫌!」
非常階段の踊りに、私の荒い呼吸と、真のすすり泣く声だけが響いていた。
鉄のすりを握る私のに、じわりと血が通っていくのをじていた。
恐怖が消えたわけではなかった。
だが、真の絶望な叫びを聞いた瞬、私のので、たく固まっていた何かが弾けた。
あの男は、、真のを支配しようとした。
そして今度は、私の常を、私の全を、私の尊厳を、で踏みにじって支配しようとしている。
ホテルのに侵入し、私の職の同僚を騙し、私たちが怯えて震えがり、互いを庇いって自滅していく様を、あのハーフリムの鏡の奥から酷に見ろしているのだ。
ふざけるな、とった。
なぜ、真っ当にきている私たちが、暗に怯えて逃げ回らなければならないのか。
なぜ、の活を破壊することに何の痛みもじない男の嫌を伺い、怯え続けなければならないのか。
「……真さん、聞いて」
私の声から、震えが消えていた。
「接禁止命令の申しては、予定通りめて。警察への被害届も、せるものは全部して。
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でも、あなたがで表にて、あの男と直接対決するようなことは、絶対にしないで」
「でも……!」
「あの男はね、私たちが恐怖に屈して、になるのを待っているのよ。自分が状況をコントロールしているとい込んでいるから、あんなに余裕ぶった態度が取れるの。……だったら、そのコントロールを奪い取るしかない」
「理さん……?」
「私は、逃げないわ。会社にも警察にも、すべて正式な続きを取らせた。あの男が次にどこからを伸ばしてきても、すべて記録に残して、堀を埋めていく。あなたがで背負う必なんてないのよ、真さん。で、法に、社会に、あの男を完全に締めすの」
受話器の向こうで、真が息を呑む音が聞こえた。
「……理さん、いね」
「くなんかないわよ」私は自嘲気に笑った。「今だって、の震えが止まらない。……でも、奪わせないわ。私の常も、あなたのしいも」
通話を終え、スマートフォンを胸元に抱きしめた。
階段の窓から差し込むの陽射しが、コンクリートのに角いの枠を作っていた。
私は呼吸を度し、乱れた髪を櫛でえてから、非常階段のいドアノブにをかけた。
フロアに戻り、自席へ歩いていく取りは、先ほどよりもわずかに確かなものになっていた。
佐伯が配そうに線を向けてきたが、私はさく頷いて見せ、再びディスプレイのに座った。
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午の業務をこなすために、キーボードのに指を置く。
逃げるのではない。
自分の持ちに留まり、常を維持することこそが、あの男に対する最の抵抗だった。
午分。
フロアの窓のでは、京湾からの湿ったがビルとなって吹き抜けていた。
私のデスクの内線話が、く鳴った。
画面には『受付』の文字が表示されていた。
私は背筋を伸ばし、迷うことなく受話器を取った。
「はい、宮本です」
受付の警備担当者の、ひどく緊張した、い声がにび込んできた。
「宮本さん。……階のエントランスゲートのに、お客様がお見えです」
臓が、鋭くねた。
「ご親族の、藤原様とおっしゃる男性です。……今、ロビーの受付カウンターのにっておられます」
受話器を握る指先が、瞬だけくなるほど張った。
臓が肋骨の裏側で激しく警鐘を鳴らしていたが、議なほどの芯はえていた。
真と話すなら、恐怖でそのに崩れ落ちていたかもしれない。だが、今は違った。男が来るとしたら、ここしかなかったのだ。阪のホテルで部を暴かれ、京の会社に話をかけて私の籍を確認した。堀を埋めて私を孤させ、逃げをなくしたで対面を迫る――それが、あの男の計算し尽くされた順だった。
「警備さん、落ち着いて聞いてください」
私は声をく抑え、瞭に発音した。
「その男は私の親族ではありません。