"午前二時、ホテルから部屋を替われと言われた" 第6話
……触られたかどうかは、見からは分かりません」
若い巡査が袋をしたで慎にバッグのファスナーの隙を確認し、「埃の乱れや無理にけた跡は見られません」と声で報告した。
目のものを物した形跡はない。
引きしもいていない。スーツケースもかされていない。
では、あの男は鍵を使って部に入り、分秒もの、体何をしていたのか。
ただ部の真んにち、眠っている私を眺めていただけなのか。
その像だけで、鳥肌が全に粟つのをじた。
「宮本さん、洗面所と浴の方も確認していただけますか」
巡査部に促され、私はすりでユニットバスのドアのへんだ。
ユニットバスの換気扇が、く回っていた。照のスイッチを入れる。
プラスチックのい壁に囲まれた狭い空。バスタブ、トイレ、そしてさな洗面台。
鏡に、青ざめて目のに隈を作った自分の顔が映った。
線をへ落とした瞬。
私の呼吸が、完全に止まった。
洗面台の蛇の側。
プラスチックのコップの隣に、黒い革張りの鏡ケースが置かれていた。
ケースの蓋は、カチリと音をてて、完全に閉じられていた。
「……あ」
声にならなかった。
喉の奥から、乾いた空気だけが漏れた。
「宮本さん? どうされましたか」
巡査部が私の異変に気づき、鋭い声をした。
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「鏡……」
私は震える指先で、その黒いケースを指差した。
「鏡が……ケースに入ってる……」
「それが、何かおかしいですか?」
「私……寝る、コンタクトをして……鏡を、そこに置いたんです。裸のまま。ツルをいた状態で、洗面台のに直接置いたんです!」
そのの全員の空気が、瞬で凍りついた。
「ケースは……ケースは、あそこのデスクのの、ポーチのに入っていたはずなんです。私、寝るにわざわざケースをして鏡をしまうなんてこと、絶対にしていません……!」
若い巡査が息を呑んだ。
巡査部が鋭い目で鏡ケースを凝し、袋越しにも触れようとせず、顔をづけて観察した。
「ポーチの所は?」
「デスクの……化粧ポーチのです。バッグのすぐ隣に置いてありました」
巡査部がデスクへ戻り、いたままのトートバッグのを覗き込んだ。
「……化粧ポーチのファスナーが、センチほどいていますね」
男は、部に入ってきたのだ。
静かにドアを閉め、暗に目を慣らしながらデスクへと歩み寄った。
トートバッグのにを差し入れ、化粧ポーチのファスナーをけ、探りで鏡ケースを取りした。
そして、洗面所へ入った。
洗面台のに無防備に置かれていた私の鏡を拾いげ、丁寧に折りたたみ、ケースのに収め、蓋を閉めたのだ。
なぜ?
どうしてそんなことをするのか。
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盗むためではない。壊すためでもない。
まるで――「私はここまで入ってきたぞ」と、から気付かせるためだけに。
あるいは、眠っている私の顔を覗き込み、枕元に鏡がないことを確かめたで、親切めいた歪んだ執着からそれを片付けたとでもいうのか。
「……鑑識を呼びます」
巡査部の声が、くくなった。
「これは単なる建造物侵入事案じゃない。確な図を持った侵入だ。さん、支配さん、今すぐ防犯カメラの映像をもう度、最初の侵入刻のに絞って洗い直してください。それから、宮本さん。荷物は私どもで運びします。あなたはこの部からてください。もう歩もに入ってはいけません」
私は頷くことすらできず、ただ退りして部からた。
廊の壁に背を打ち付け、たいビニールクロスにすがりついた。の震えが止まらない。
そのとき、廊の向こうから、ペタペタとスリッパを引きずる音が聞こえてきた。
顔をげると、先ほどの女性――野が、警察官の制止をすり抜けるようにして、こちらへ歩いてくるところだった。
「あの……警察の方」
野の声は掠れていた。には使い捨てのコップを握りしめ、パジャマの袖を固く握りしめている。
「私、見ました。……さっき、言えなかったんですけど」
巡査部が鋭く振り返った。
「あなたはこのフロアの宿泊客の方ですか」
「〇号の野です」彼女は私を瞥し、すぐに線を警察官へ戻した。