"午前二時、ホテルから部屋を替われと言われた" 第5話
「う、嘘よ……」
吐き気が込みげてきた。胃ののものが気に逆流しそうになり、元をで押さえた。
暗の、ドアがく微かな音。カーペットを踏む見らぬ靴底のみ。ベッドのすぐ脇まで忍び寄り、毛布にくるまって無防備に寝息をてている私の顔を、見ろしていた誰かの線。
「宮本様、しっかりしてください!」
支配が私の肩を支えようとを伸ばしたが、私はそのを激しく振り払った。
「触らないで!」
切声がた。
「何をしてくれたのよ……! 私が寝ているに、誰かを部に入れたの!? もし私が目を覚ましていたらどうなっていたの!? 殺されていたかもしれないのよ!」
はただ青ざめ、平伏して謝罪を繰り返すことしかできなかった。
そのとき、くからサイレンの音が聞こえてきた。
夜の御堂筋のを縫うようにしてづいてくる、複数台の緊急両の子音。サイレンはホテルの真で止まり、ドアの閉まる鈍い音がいくつかなって響いた。
「……警察が到着いたしました」
が消え入りそうな声で言った。
「宮本様、変恐縮ですが、警察官のち会いのもと、〇号の状況をご確認いただいてもよろしいでしょうか。お部のに、何か盗難に遭ったものや、審なものが残されていないか、ご本様でなければ判断がつきません」
広告
「戻りたくない」
即座に拒絶した。
「あんな部、度と戻りたくない!」
「お気持ちは痛いほど分かります」松永支配が顔をげた。「ですが、警察が現検証をうにあたり、被害状況の確認がどうしても必となります。もちろん、警察官が常に周囲を警護いたします。私どもも全員ち会います。どうか……どうかお願いいたします」
私は荒い息を吐きながら、壁にもたれかかって目を閉じた。
かなければならないことは分かっていた。私の財布や分証は今このショルダーバッグに入っているが、ノートパソコン、会社の顧客データが入ったUSBメモリ、着替えの入ったスーツケースはすべて〇号にある。
何より――その男が、部ので体何をしていったのかを確かめなければ、私はこの先、分たりともきたがしない。
「……分かったわ」
私は震えるでちがった。
「警察のと緒に、きます」
エレベーターで階へりると、フロアの空気は変していた。
制を着たの警察官が廊にち、無線からくノイズ交じりの交信音が漏れていた。代半ばの体格のいい巡査部と、代半の痩せ型の巡査だった。
「宮本さんですね。曽根崎署の域課です。怖いいをされましたね」
巡査部が落ち着いた声で会釈した。その事務とも言える静さに、私はかろうじて正気をつなぎ止めた。
広告
「鑑識を呼ぶかどうかも含めて、まずは内の状況を目で確認します。元に気をつけて、私のろをついてきてください。部のの物には、むやみに触らないようにお願いします」
巡査部を先に、私、、支配、そして若い巡査の順で、〇号のにんだ。
ドアノブには触れず、警察官が袋をはめたでマスターキーを差し込み、静かに押しけた。
部のは、私がびしたときのまま、暗い静寂に沈んでいた。
巡査部が壁のスイッチを押し、部の主照を点けた。
パッといが広がり、見慣れたはずのシングルルームがわになる。
ベッドのシーツは、私がび起きたときの乱れた形のままだった。枕も、毛布も、荒々しくね除けられた位置からいていないように見えた。デスクのに置かれたビジネスバッグも、壁際のラゲッジラックに乗せられた黒いスーツケースも、ファスナーがけられたような形跡はなかった。
「……ぱっと見、荒らされた様子はありませんね」
巡査部が内を見回しながら言った。
「引きしやクローゼットはどうですか。けられた形跡はありますか」
「クローゼットは……閉まったままです」
私は入りの敷居を跨ぐのをためらいながら、喉を締め付けられるいで答えた。
「コートを枚掛けただけで、触っていません」
「パソコンや、現などの貴品は?」
「パソコンは、あのデスクのの黒いバッグのです。