"午前二時、ホテルから部屋を替われと言われた" 第3話
くで、自ドアの閉音か、あるいはが擦れるような微かな環境音が拾われていた。
「宮本様」
が、途切れ途切れに、だが恐ろしいほど平坦な調で言った。
「先ほど、午分頃のことです。私どものフロントに、代半ばから代とお見受けする男性が来られました」
私は息を止めた。
「その男性は、〇号のカードキーが入っていたのケースをに持っていらっしゃいました。そして、『妻が部でをして寝込んでいる。薬を買いにて戻ってきたら、カードキーが反応しなくなってしまった。スペアキーをもう枚発してほしい』と仰いました」
背筋の奥を、細い針でなぞられたような寒気がった。
「……何を、言っているんですか」
「男性は、宮本様のお名をフルネームで仰いました。ご提示いただいたカードケースの内側には、確かに〇という数字と、お客様のチェックインが印字されておりました」
「嘘でしょう」
声が震えて、掠れた。
「私、結婚なんてしていません。独です。夫なんて、いるはずがありません」
受話器の向こうで、が苦しげに息を吐きした。
「……承しております。お客様のご宿泊カードの控えを先ほど確認し、緊急連絡先も含め、単でのご予約であることを把握いたしました。だからこそ、今すぐお部を移していただく必があったのです」
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「その男は今どこにいるんですか!?」
私はわず声を荒らげた。
「警察は呼んだんですか? どうしてそので捕まえなかったんですか!」
「宮本様、落ち着いてください。警察にはすでに通報いたしました。所轄の警察官がもなく到着いたします。……ただ、申し訳ございません。その男が現どこにいるのか、私どもでは把握できておりません」
「把握できていないって……ホテルのにいるかもしれないっていうことですか!?」
「その男性は、私どもがシステムを確認するために奥の事務所へ入ったわずかな隙に、フロントから姿を消しました。防犯カメラの映像を確認しておりますが、正面玄関からへた形跡が……現のところ、確認できておりません」
目のの景がぐらりと揺れた。
密閉された号の空気が、急激にくなっていくような錯覚に襲われた。鍵をかけたはずのドアの向こう、カーペット敷きの廊の暗に、見らぬ男が息を潜めてっている姿が脳裏に張り付いてれない。
「すぐに伺います。絶対にドアをけないでください。私がドアを回ノックし、『フロントのです』と名乗るまで、チェーンはさないでください」
通話が切れた。
私は受話器を握りしめたまま、ベッドの端に腰を落とした。
臓の鼓がの奥で激しく打ち鳴らされている。
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宮本理。京の物流会社、ロジスティクスで輸入通関の管理を担当してになる。今週は阪港のコンテナターミナル察と、荷主企業との定期連絡会のために、泊の予定でこのホテルを取った。宿泊先の配は会社の指定代理経由で、予約確認は私の社用メールにしか届いていない。
私がこのホテルに泊まっていることを、なぜがっているのか。
なぜ私のフルネームをっているのか。
そして――なぜ、私が〇号にいることを突き止め、カードケースを持っていたのか。
ノックの音がした。
コン、コン、コン。
正確に回。続いて、ドア越しに押し殺した声が聞こえた。
「宮本様、フロントのです。支配の松永も同しております」
私はちがり、音を殺してドアスコープを覗いた。紺の制を着た細の若い男と、グレーのスーツを着た髪交じりの男が、青ざめた顔でっていた。
チェーンをつけたまま、わずかにドアをける。
「さんですか」
若い方の男が、名札を胸のに掲げてくをげた。名札には『悠斗』と刻まれていた。
「夜分に本当に申し訳ございません。支配の松永でございます」
配の男が、絞りすような声で言った。額にはびっしりと脂汗が浮いている。
私はチェーンをし、を部のに招き入れた。
とも、踏み込むなり廊のを素く確認し、すぐにドアを閉めて鍵を掛けた。