"「明日から母をやめます」結婚前夜、席次表を消した私" 第12話
親戚たちは誰も声をさない。 苦しい沈黙が広を支配する。
俊彦の歪んだ笑顔が、私へと向けられた。 「どうだ、佳代。孫に会えなくなってもいいんだな?」
私は、ゆっくりと息を吸い込んだ。 その脅迫の浅ましさに、をこうとした――
その瞬だった。
ガタンッ!
激しい音をてて、座の座布団から誰かがちがった。
全員の線が斉にその所へと向かう。
ちがったのは、きく膨らんだお腹を抱えた、奈央だった。
その顔は、血の気が完全に引いて真っだった。 肩が激しくし、呼吸が荒い。 テーブルのに置かれた陶器の湯呑みを、くなるほどい力で握りしめている。
「……奈央?」
俊彦が、嫌を取るような声をかけた。 「どうした、気分でも悪いのか? 丈夫だ、お父さんが全部あいつを追い払ってやるからな」
だが。 奈央の線は、私を通り越し、真っ直ぐに実の父親――俊彦の顔を射抜いていた。
その瞳に宿っていたのは、私への憎しみではなかった。 全を震わせるほどの、抑えきれない激しいりと、拒絶だった。
「……奈央?」
俊彦の甘ったるい声が、静まり返った広に響いた。 「どうした、気分でも悪いのか? 丈夫だ、あんな恩らずの女、お父さんが綺麗さっぱり追い払ってやるからな」
けれど、奈央は父親の言葉などに入っていないようだった。
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くなるほどく握りしめられた陶器の湯呑み。 刻みに震える肩。 きく膨らんだお腹を庇うように片を当てながら、奈央は血の気の引いた唇を震わせていた。
「……勝なこと、言わないで」
蚊の鳴くような、掠れた声だった。
「あ?」
俊彦が怪訝そうに眉を寄せる。
「奈央、聞こえんぞ。もっとはっきり――」
「私の子供を、お父さんの復讐の具にしないでって言ってるの!」
広の襖をビリビリと震わせるような絶叫だった。
親戚同が、息を呑んで直した。 座に座る俊彦の顔から、瞬で傲な笑みが消え失せる。
「な……奈央、お、誰に向かってそんなを利いてるんだ! 俺はおのために――」
「私のために何をしてくれたの!?」
奈央の瞳から、ボロボロと粒の涙がこぼれ落ちた。 だが、その線は父親の眉を狂気じみた鋭さで射抜いたまま、微だにしなかった。
「お父さんはいつだってそう! 全部『おのため』『族のため』って言いながら、自分が気持ちよくなりたいだけじゃない!」
「なっ……!」
「結婚式のあのだってそうよ!」
奈央の声が、広の井に叩きつけられた。
親戚たちがざわりと揺する。 俊彦の額に、ドッと油汗が滲みた。
「おい、奈央、やめろ! 親戚ので何を――」
「結婚式ののの夜、お父さんが私の部に来て、あの誓約を突きしてきたんじゃない!」
奈央は叫び続けた。
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取り乱し、乱れた髪が頬に張り付くのも構わずに。
「『佳代は調子に乗っている。式でみんなのであいつを追い詰めろ。マイクでお母さん失格だと告発して、この誓約を叩きつければ、あいつは泣いて座して謝る。そうすれば、俺たちの言いなりになる』って! そう吹き込んだのは、お父さん、あなたでしょ!!」
広が、完全に凍りついた。
親戚たちの線が、斉に俊彦へと突き刺さる。 軽蔑と、信じられないものを見るような、酷な線。
俊彦はをパクパクとかしたが、喉から乾いた空気がるばかりで、言葉になっていなかった。
「私は……お母さんが急に婚するなんて言いして、パニックになってた……。お父さんの言う通りにすれば、お母さんが目を覚まして、私のところに戻ってきてくれるって、信じちゃったのよ……」
奈央は胸元を掻きむしるようにして泣き崩れそうになった。 その体を、隣に座っていた亮介さんが無言で、しっかりと支えげた。
亮介さんは俊彦に向き直ると、静かに、だが底えのする声で言った。
「お義父さん。奈央がしたことは、決して許されることではありません。結婚式であんな暴挙にて、お母さんをく傷つけた。それはかけて背負うべき罪です。……ですが」
亮介さんのが、奈央の肩を抱きしめる。
「まれてくる子供を質にして、自分の妻を脅迫するような真似に、僕たち夫婦を巻き込まないでください。
お義父さんがお母さんと婚するのは勝ですが、僕たちの子供をお義父さんのプライドの具に使うのは、輪際やめていただきたい」