"白紙の退職届を突きつけた夫が、3ヶ月後に「頼むから辞めないでくれ」と叫んだ日" 第11話
頼れるとっていた内のネットワークが、音をてて断ち切られたのだ。
義母はシーツを握りしめ、涙をボロボロとこぼしながら私を睨みつけた。
「由美さん……あんたが理恵を焚きつけたのね! あんたがこのを壊したのよ!」
私は何も答えなかった。 テーブルののグラスを片付け、静かにちがる。
もう、をかすことすら無駄だった。
その翌週から、夫の態度に奇妙な変化が現れた。
あれほど荒れ狂っていた夫が、急にので声を荒らげなくなったのだ。 朝く起き、自分でネクタイを締め、作業着に着替えて社していく。
夜遅くに帰宅しても、酒の匂いはしなかった。 疲れ果てた顔で台所にち、自分でレトルトのカレーを温め、義母の部へ運んでいる。
「由美、すまなかった」
ある夜、夫が私の部のドアをノックし、をげてきた。
擦り切れた作業着の袖。には、段ボールを扱った跡の細かな切り傷が無数についていた。
「俺、違ってたよ。おに甘えて、会社の経営をおに背負わせてた。ホテルの契約解除、正式に受け入れたよ。違約の支払いも、分割でを取り付けた」
夫の言葉に、私は息を潜めた。
「これからは、の丈にった商売をする。方の堅スーパーと、さなビジネスホテルの取引が決まりそうなんだ。利益率はいが、確実に回せる。
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俺で、配送も帳簿もやるつもりだ」
夫の瞳には、かつてのような尊なはなかった。 をすすり、現実のたさをった男の、再起の顔に見えた。
……は、本当に変われるのだろうか。
の結婚活で、初めて見る夫の殊勝な姿に、私ののどこかで、え切っていた澱がわずかに揺らいだのは事実だった。
もし、このが本当に自分のでち、過の傲さを悔い改めるのなら――。 婚届を突きつけるに、もう度だけ、としての再を見届けるべきなのかもしれない。
だが。
その淡い迷いは、わずか数、最悪の形で叩き潰されることになった。
曜の午。 たまたま振替休を取っていた私は、義母の昼を用し、自で読をしていた。 夫は「規の取引先との打ちわせだ」と言って朝からかけていた。
ピーン、ポーン。
静かな昼がりの宅に、インターホンが鳴った。
玄関のモニターを確認すると、濃紺のスーツを着た代半ばの男性がっていた。 には黒いアタッシェケース。胸元には、元の信用庫の社章がっている。
ドアをけると、男性は々とをげた。
「突然の訪問、失礼いたします。信用庫、融資課の松本と申します。佐藤健社のご自宅でよろしかったでしょうか」
「はい、妻の由美ですが……主は今、しておりますが」
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「あ、奥様でいらっしゃいますか」
松本と名乗る融資担当者は、堵したように息を吐いた。
「実は、本午から佐藤社とご面談の予定だったのですが、お話が繋がらなくてですね。ご提いただいております『事業承継および緊急運転資ご融資』の類につきまして、担保提供者でいらっしゃいますお母様の最終確認に伺った次第です」
喉の奥が、ぎゅっと縮みがった。
……融資? 担保提供者?
「あの……何の類でしょうか。私は何も聞いておりませんが」
松本氏は瞬、怪訝そうに眉を寄せた。
「えっ……? 佐藤社からは、ご族全員のはすでに得ているとお伺いしておりますが。お母様の佐藤枝様名義の産……あきる野にございます遊休を、根抵当権の設定担保として差し入れていただく件です」
臓が、ドクンとたい音をててねた。
あきる野の遊休。
くなった義父が、義母のために唯遺した、約坪の宅だ。 評価額にして、およそ千百万円。 義母が将来、本格な介護が必になった際、売却して施設入居のに充てるための、命綱の資産だった。
「……々お待ちいただけますか。義母を呼んでまいります」
私は震えるを叱咤し、奥のへと向かった。
義母はベッドので、ギプスを投げしてテレビを見ていた。 事をかいつまんで話すと、義母の顔からみるみる血の毛が引いていった。
「な……何を言ってるの? 私のを、担保に……?」