"夫が私を退職させた翌朝、会社は夫を呼び出した" 第12話
部の隅。 パイプ子に座らされていた奈緒が、息を呑む音がさく響いた。
奈緒はの袖を握りしめ、青ざめた顔で俯いていた。 田島から「佐藤主任の過のミスを告発すれば、任のポストを用する」と唆されていた彼女は、証として同席を求められていたのだ。
彼女の目には、私が保のために嘘を並べて、仕を演じる姿が見えていたのだろう。 だが、私が切の弁解を捨てて自分の過失を差しした瞬、彼女の肩が微かに震え始めた。
「……さん」
法務担当が奈緒に向き直った。
「あなたからも証言を。半、佐藤主任から追認類の確認を止められた、あるいは隠蔽を指示されたという事実はありますか?」
奈緒の喉が、引きつるようにいた。
田島の筋き通りに答えるなら、「佐藤主任に止められた」と言えばいい。 そうすれば、彼女はをかぶることなく、空いた主任の子に座ることができる。 それが、組織でき残るための最も利なち回りのはずだった。
私は何も言わず、奈緒を見つめもしなかった。 彼女がどんな選択をしようと、受け止める覚悟はできていた。
「……いいえ」
絞りすような、掠れた声だった。
法務担当がペンを止める。 が顔をげた。
「いいえ、とは?」
「隠蔽を指示したのは……由美先輩ではありません」
奈緒は震えるで、胸ポケットから本の黒いUSBメモリを取りした。
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そして、恐る恐る机の端に置いた。
「これは……田島から私個に送られてきたメールのバックアップと、先週の通話録音です」
部の空気が、ピシリと凍りついた。
「由美先輩が庭の病でだったヶ、サプライヤーからアレルゲン検査の未完通が届いていました。私は田島に報告しました。でもは……『佐藤主任がすでに判を押しているんだから、今さら蒸し返すな。類はシュレッダーにかけろ』と」
奈緒の瞳から、粒の涙がポロポロと類のに落ちた。
「は、私に言いました。『余計なことを言わなければ、来期の査定で主任にしてやる。断れば、契約更はない』って……。私、怖くて……」
奈緒は両で顔を覆い、声を殺して泣き崩れた。
私は静かに目を閉じた。 胸の奥で、張り詰めていた何かが静かに音をてて解けていくのをじた。
奈緒をむ気持ちは、最初からなかった。 非正規からいがり、活のと理尽な圧力に怯えていた彼女を、ここまで追い詰めたのは、でもない組織の歪みと、半の私の甘さだったのだから。
「……確認します」
は々しく頷き、USBメモリを引き寄せた。
「佐藤主任の処分については、規定に基づき社内懲罰委員会で審議します。ですが、本件の隠蔽作および調達ルートの正関与については、田島に対する査問へ直ちに移します」
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ガタ、と子を引く音がして、法務担当がちがった。
守り続けてきた私の平穏は、完全に壊れた。 けれど、その瓦礫のから、ようやく呼吸ができる本物の空気が流れ込んできたような気がした。
午。
の通用をると、灯の暗いのに、たいのがり始めていた。 傘を持っていなかった私は、コートの襟をてて駅へと急いだ。
URの単用団を借りてから、が過ぎていた。 畳半の畳部に、布団とさな座卓、気ケトルがつあるだけの簡素な暮らし。 健の鳴り声も、義母の嫌も、テレビの爆音もないその部は、驚くほど静かで、夜がこれほどいものだということを私は何ぶりかにいしていた。
「……由美」
団の入り、駐輪の暗がりから、男のがぬっと現れた。
臓がねがった。
ビニール傘を差した健だった。 作業着の着はで汚れ、無精髭が顎の周りに伸び放題になっている。 には、コンビニのレジ袋がぶらがっていた。に入っているのは、酒のパックと、義母が毎んでいる圧剤の処方薬の束だった。
「健さん……どうしてここが」
「弁護士から届いた郵便の差欄に、この団の管理事務所のスタンプが押してあったんだよ」
健は充血した目で私を見ろした。
酒と煙と、湿ったの悪臭がをつく。