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"「母を助けないで」腎臓提供の前日、十五歳の甥は私に縋った" 第13話

その景を背に、私は歩も振り返らずに会議をた。

それから、のことだった。

拓は保護所へ移送されることが決まり、病院の続きは全て完した。 私は最にもう度だけ、透析を終えた真理の病を訪れた。

部には、真理が頑なに拒んでいた訪問介護の担当ケアマネジャーが作成した、週回の活支援計画が置かれていた。 そこには、ヘルパーの訪問、配サービスのメニュー、福祉タクシーの配が、無質に、完璧に記されていた。

真理はベッドので、抜け殻のように横たわっていた。 あれほど喚き散らしていた気力は完全に底をつき、ただ虚ろな目でい井を見つめている。

「真理」

声をかけても、妹はすぐにはかなかった。 数秒、首だけをゆっくりとこちらに向けた。 その瞳には、もはや私を脅迫する力も、嘘を並べる気力も残っていなかった。

「……満した?」 掠れた、力のない声だった。 「拓は連れてかれたわ。親戚から『酷な母親』だって縁を切られた。所にも、福祉のが入りして、全部バレる……。私の、もうおしまいよ」

「おしまいじゃないわ」 私はベッドの脇のパイプ子に腰掛けた。 「あなたの命は繋がってる。週に回、ちゃんと透析を受ければ、あと何だってきられる」

「こんなの、きてるって言わないのよ!!」

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真理の瞳から、ボロボロと粒の涙が溢れした。 妹はシーツを両で引き裂くように握りしめ、喉の奥から獣のような嗚咽を漏らした。

「悔しいのよ……! なんで私だけがこんな目に遭わなきゃいけないの!? なんで私の体ばっかり、ボロボロになっていくのよ! お姉ちゃんは健康で、仕事もあって、自由で……私はずっと、この械に繋がれて、ぬまで監されてきるの!?」

真理は顔を覆い、子供のようにしゃくりあげながら泣いた。 それは、誰かを操るための計算された涙ではなかった。 、病気の恐怖と孤独ので、プライドと嘘で塗り固めてきたの殻が、完全に々に砕け散った音だった。

「……私ね」 指の隙から、震える声が漏れた。 「怖かったのよ」

「何が?」

「元気になって……普通の体に戻るのが」

真理は涙でぐしゃぐしゃになった顔をげ、怯えた目で私を見た。

「病気でいれば……『な母親』でいられた。拓も、私の言うことを何でも聞いてくれた。私が完全なのは、全部病気のせいだって言い訳できた……。でも、もしあんたから腎臓を貰って、元気になってしまったら……私、もう言い訳ができない」

胸の奥に、たいが吹き抜けた。

「元気になった私が、また直みたいな男に騙されたら? 仕事もうまくいかなくて、拓の母親としてもちゃんとせなかったら? ……『健康なのに何もできない、ただの無能な女』になっちゃうのが、たまらなく怖かったのよ……!」

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それが、この妹のの奥底に眠っていた、本当の淵だった。

病気の体を憎みながら、同にその病気を、自分を守る唯の壁にしていた。 拓を支配し、私から臓器と財産を奪おうとしたその醜悪な計画の根底にあったのは、ただの幼稚で、肥化した「自己防」だったのだ。

「だからって」 私の声は、静かだったが、微も揺らがなかった。 「あの子を連れにしていい理由にはならない」

真理の嗚咽が、ピタリと止まった。

「あなたのそのさは、あなたが自分で引き受けなさい。拓に背負わせることも、私に肩代わりさせることも、度と許さない」

私はちがった。 バッグを持ち、ドアに向かって歩きす。

「お姉ちゃん」 背から、消え入りそうな声がした。 「……もう、度と会ってくれないの?」

私はドアノブにをかけたまま、振り返らずに答えた。

「あなたが、自分ので自分のをきられるようになったらね」

カチャリとドアをけ、私は病をにした。 廊に広がる初のは、痛いほどたかったが、私の胸のは、かつてないほど澄み切っていた。

それから、ヶが過ぎた。

季節はを越え、にはの兆しが漂い始めていた。 私の活は、驚くほど静かに、そして穏やかに流れていた。

父が遺してくれたで、朝は温かい茶を淹れ、仕事へき、夕方には庭の入れをする。

親戚からの連絡は切途絶え、真理の向も、区のケースワーカーからの定期な事務報告メールで確認するだけにとどめていた。

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