"「母を助けないで」腎臓提供の前日、十五歳の甥は私に縋った" 第10話
識はありますが、極度の衰状態です。そして……』
血の気が、気にの底へ引いていくのをじた。 「そして、何ですか!?」
『拓君のリュックのから、お母様の透析用の予備薬とわれる力な圧剤が、シートごと複数見つかりました。さらに、ノートの切れ端に……』
話の向こうで、が擦れる音がした。
『「僕がいなくなれば、お母さんは施設に入って、おばさんも術しなくて済む。全部僕のせいだから、ごめんなさい」と、遺のようなメモが挟まれていました』
持っていたマグカップが、に落ちて砕け散った。 い湯が首にかかったが、何のさもじなかった。
『佐藤さん、今すぐ来られますか!? 拓君、病院の処置で、ずっとあなたの名を呼んでいるんです!』
夜救急の自ドアがいた瞬、刺すような消毒液の臭いと、子モニターの無質な警告音が鼓膜を打った。
元がおぼつかないまま、処置のの廊をった。 タクシーのに傘を忘れたことにも、さっき落としたマグカップの破片で靴が濡れていたことにも、病院に着くまで気づかなかった。
「佐藤由紀さんですね」
声をかけてきたのは、濡れたトレンチコートを着た柄な女性だった。 話をくれたスクールソーシャルワーカーの川さんだった。 張り詰めた表の奥に、隠しきれない疲労と痛ましさが滲んでいる。
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「拓君は……!」
「胃洗浄を終えて、いま点滴で眠っています。幸い、薬をに含んだ直に自分で怖くなって吐きそうとしたようで、血濃度は致量に至っていませんでした」
膝から力が抜け、たいビニールクロス張りの壁に肩をぶつけた。 そのに崩れ落ちそうになるのを、川さんのがしっかりと支えた。
「ただ……極度の栄養と、眠による度の脱です。学の体ではありません」 川さんは声を潜め、元のバインダーを胸元に抱きしめた。 「彼のリュックから見つかったメモ、見ますか」
差しされたのは、透な証拠品ビニール袋に入れられた、ノートの切れ端だった。 拓の、あの几帳面な跡。 だが、文字は震え、ところどころ涙で滲んで波打っていた。
『僕がいなくなれば、お母さんは施設に入って、おばさんも術しなくて済む。 僕のせいで、みんながおかしくなった。 お母さん、元気にしてあげられなくてごめんなさい。 おばさん、巻き込んでごめんなさい』
界がぐにゃりと歪んだ。 喉の奥底から、くて苦いものが込みげてくる。
……なんで。 なんで、この子が謝らなければならないのか。
が保のために嘘をつき、痛みに耐えかねてのを貪り、都よく逃げを探し回った末に。 歳の子供が、自分のそのものを「消」
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することで帳尻をわせようとした。
「……由紀さん」 処置のカーテンの隙から、医師がてきた。 「拓君が、目を覚ましました。あなたに会いたいと」
カーテンをけると、ベッドのに、さらにさく縮こまった拓がいた。
には酸素のチューブ、腕には太い点滴針。 青い顔に、乾ききった唇。 私が入ってきたのを見ると、拓は怯えたように線を彷徨わせ、シーツを震えるで握りしめた。
「……おばさん」 掠れきった、消え入りそうな声。
「らないで……ごめんなさい。僕、ねなかった……」
その言葉を聞いた瞬、胸の奥で何かが張り裂けた。 私はベッドに駆け寄り、点滴のチューブに触れないよう、拓のを両で抱きしめた。
「謝らないで!」 私の頬を、い涙がボロボロと零れ落ちた。 拓のパサついた髪に顔を埋めた。
「ねなくてよかった……きててくれて、本当によかった……! 拓、あなたは何つ悪くないの。絶対に、度とそんなこと考えちゃダメ!」
「でも……僕がいるから、お母さんは僕を捨てようとして……おばさんは、腎臓を取られそうになって……」
「違うの」 私は拓の目を見つめ、はっきりと首を振った。 「あなたのせいじゃない。が、自分のさをあなたの背に押し付けただけ。……もう、絶対にあなたに背負わせない。私が、この狂った連鎖を全部止めるから」
拓の細い指が、私のコートの袖を々しく握り返してきた。
そのさな体温をじながら、私のので、たくい決が固まった。