"娘を救った担任に、娘が叫んだ「信じるな」" 第10話
「さっき、紗奈ちゃんから話があったの!!」
結の目から、粒の涙が滝のように溢れした。 その声は、絶望で完全に裏返っていた。
「紗奈ちゃんの、特定されて、掲示板に所晒されたって……! 紗奈ちゃんのお母さん、狂ったように叫んでた……! 『あんたたちのせいで全部終わりだ』って……!」
「あ……」
声がない。 喉が干からびて、呼吸の仕方を忘れてしまったかのように胸がする。
だが、結のから放たれた次の言葉は、私の魂を完全に叩き潰した。
「それだけじゃないの……!」
結はスマートフォンの画面を、私の目のに叩きつけるように突きした。 そこには、学の徒たちのグループチャットのスクショが表示されていた。
『速報:唯がさっき、旧舎の非常階段のからびりようとして警察と消防が来てる。ガチでヤバい』
結の瞳から、が完全に消えっていた。 幽霊のように虚ろな目で、娘は私を見ろし、血を吐くように呟いた。
「お母さん……これが、お母さんのやりたかったことなの?」
夜零。 くから、夜の静寂を切り裂いて、けたたましい救急のサイレンがづいてくるのが聞こえた。
サイレンの赤いが、リビングのカーテンを血のように染めげていた。
ざかっていく救急の咆哮を聞きながら、私はち尽くしていた。 の指先から覚が消えていく。
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「お母さん……これが、お母さんのやりたかったことなの?」
娘の絞りすような声が、え切った部に落ちる。 スマートフォンの画面。 暗い非常階段の、すりにをかけた女のシルエット。 警察官が取り押さえる瞬の、ブレた盗撮写真。
唯さん。 半、すべてを奪われ、引きこもるようにして息を潜めていたあの子が。 私の配った枚ののせいで、今夜、命を絶とうとした。
私は「娘のために」いたはずだった。 理尽な学に復讐し、娘の濡れをらす正義の方のつもりだった。 だが、私がやったことは何だ。 の醜い保を暴くという名目で、傷が塞がりかけていたの子供を、もう度ネットの処刑台へ引きずりしただけではないか。
喉の奥が、い鉄をみ込んだように焼けていた。 息が吸えない。 胸をかきむしっても、肺に空気が入ってこない。
結は何も言わず、自分の部へ戻っていった。 カチャリ、と鍵の回る音がした。 今度はもう、ドアを叩くことすらできなかった。
翌朝、はがっていたが、空は苦しい鉛に濁っていた。
玄関のチャイムが、狂ったように連打された。 インターホンの画面を見るまでもない。 から、号が響いていた。
「けなさい! さん、にいるんでしょう!」
チェーンをかけたまま、ドアを数センチだけけた。
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っていたのは、唯さんの父親だった。 充血した両目。りで引きつった頬。 そのろで、母親が泣き崩れるようにして夫の腕にしがみついている。
「……さん」
「唯は……うちの唯は、命を取り留めました」
父親の声は、激しいりのあまりく震えていた。
「集治療で、今も識が混濁しています。首を切って、からびりようとしたんですよ……! あなたが、ネットにあのをばら撒いたんですね!?」
「違います……! ネットに流すつもりなんて、絶対に——」
「言い訳をするな!!」
父親の拳が、ドアを激しく殴りつけた。 属が歪むような鈍い音が、狭い踊りに響き渡る。
「あなたにとっては、自分の娘の無実を証するための具かもしれない! でも、うちの子にとっては、度といしたくない獄なんです! ようやく、ようやく夜眠れるようになったあの子の傷を、で踏み荒らして……!」
母親が、崩れ落ちた姿勢のまま、私を見げて叫んだ。
「あんたの娘のせいで! 紗奈ちゃんだけじゃない、結ちゃんだって、あの緒に笑ってたんでしょう!? なんで今さら被害者面して、うちの子を度殺すような真似をするのよ!!」
言葉がなかった。 を殴られ続けたように、界がく滅する。
私はチェーンをし、ドアを全にした。 そして、たたきのたいコンクリートのに、両膝と両を突き、額をに擦りつけた。
座だった。 謝って済む問題ではない。 許されるはずもない。