"娘を救った担任に、娘が叫んだ「信じるな」" 第7話
「お母さん……ごめんなさい……ごめんなさい……」
結がにいつくばり、私の首にすがりついて泣き叫んだ。
「私、怖かったの……お母さんを失望させるのが怖くて……! でも、紗奈ちゃんが学をっていくのを見て、息ができなくなって……! だから、、謝りにったの! 警察に本当のことを言おうって、紗奈ちゃんに言いにったの……!」
「……でも、紗奈ちゃんは許してくれなかったのね」
結は何も言わず、ただ私の膝に顔を埋めて激しくしゃくりあげた。
許されるはずがない。 を狂わされた女が、今さらやってきた共犯者の謝罪など、受け入れるはずがないのだ。
だが、私の胸の奥で、ドス黒い炎が静かに燃えがり始めていた。
娘は罪を犯した。それは消えない。 だが、歳の子供のみにつけ込み、母親のを脅しの具にして偽証をしたがいる。 その女が今、体育館で拍を浴び、徒を救った聖母のように微笑んでいるのだ。
許せない。 絶対に、このまま終わらせるわけにはいかない。
私は結の肩を抱き起こし、その涙で濡れた顔を両で包み込んだ。
「結、泣くのをやめなさい」
声が、自分でも驚くほど徹に響いた。
「このは、お母さんが預かる。あなたが背負うべき罪は、あなた自で償わせる。でもね——あなたをこんな目に遭わせたあのを、絶対に許さない」
広告
午分。 職員の話は、朝の欠席連絡でひっきりなしに鳴り響いていた。
私は来客用の札を胸につけ、応接の子に腰掛けていた。 向かい側のテーブルには、運ばれてきた湯呑みからちる湯気がく揺れている。
ガチャリとドアがき、教を伴って藤原先が入ってきた。 グレーの品なカーディガンを羽織り、髪を綺麗にシニヨンにまとめている。 その表には、いかにも「登気の徒の母親を労わる」教師特の、柔らかい憂いが貼り付いていた。
「さん、朝くからどうされたんですか? 結さんのご様子はいかがですか?」
藤原先は私の向かいに腰をろすと、底配そうに眉をの字に曲げた。 隣の教は、を隠そうともせず腕組みをしている。昨の体育館での騒ぎをまだ根に持っているのがありありと伝わってきた。
「昨は本当に申し訳ありませんでした」
私はまず、くをげた。 世体の防壁を崩すには、まず礼儀正しく振るう必がある。
「ただ、どうしても藤原先に、直接お伺いしたいことがありまして参りました」
「何でしょうか? 私にできることなら、何でもおっしゃってくださいね」
私はバッグのから、枚の透なクリアファイルを取りした。 には、今朝結の鞄から見つけした、あの黄い付箋のカラーコピーが挟まれている。
広告
それを、テーブルの央、藤原先の目のに静かに滑らせた。
藤原先の線が、のに落ちる。
その瞬。 ほんの秒にも満たない刹、先の瞳の奥で、黒い瞳孔がキュッと収縮したのを私は見逃さなかった。 だが、それだけだった。 先の頬の筋肉はピクリともかず、柔らかな笑みは崩れなかった。
「……これは?」
首を傾げる仕すら、完璧に計算されていた。
「先の跡ですね」
私の声は、く、かった。
「半、結にこの指示をしましたね。紗奈ちゃんに罪を着せるように。母子庭のみにつけ込んで、虚偽の証言をしましたね」
隣で教が「な、何を馬鹿なことを!」と声を荒らげた。 だが、藤原先は静かにを挙げ、教を制した。
先は湯呑みにを伸ばし、だけお茶をに含んだ。 そして、フゥとさなため息を漏らすと、私をじっと見つめ返した。
その目は、もはや慈に満ちた聖母の目ではなかった。 獲物を品定めするような、徹で無質なの目だった。
「さん。お気持ちは分かります」
静かな、落ち着き払った声だった。
「結さんがをして、精神に追い詰められているからといって、そのような根拠のないメモを持ちされるのは……正直、困惑いたします」
「根拠がない? これはあなたの字よ!」
「付箋なんて、誰でも真似してけますわ」
先は事も無げに言った。
「仮に、私がいたメモだったとしましょう。