"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第30話
母親を焚きつければ、妻を追い詰めてくれる。倫相には「子供は来ない」とさせておく。
すべては、私が「はい」と頷くことを提に組みてられた勝な台本だった。
その台本は、私が「無理です」と突き放した瞬に、枚残らず燼に帰したのだ。
母親を方だとっていた夫の目論見は、嘘が剥がれ落ちた瞬に完全に崩壊した。
今、この卓のに、夫の方はただのもしなかった。
い沈黙の、夫がを見つめたまま、絞りすように呟いた。
「……悪かったよ」
夫は「悪かった」と何度も繰り返した。そして、すがるような目で私を見げた。
「もう度と会わない! 頼むから……息子たちの父親でいさせてくれ!」
字句、違わなかった。
の、この同じ卓で額をに擦り付けて泣き叫んだと、まったく同じ台だった。
あの、私はその言葉を信じた。信じて、幼い子供たちの顔を見つめ、耐えるを選んでしまった。
「……にも、まったく同じ言葉を聞きました」
私の静かな声に、夫のが止まった。
「『もう度と会わない、息子たちの父親でいさせてくれ』。私はあの、その言葉を信じました。そして信じた結果が、の玄関に赤い靴を履いてっていたのです。……今度は、度と信じません」
「ゆき……!」
「終わりです。婚しましょう」
夫は卓にすがりついた。
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「息子たちまで……俺から奪う気か!?」
「奪うのではありません。子供たち自に選ばせます。と公平が自分で決めます。私は、がした決断に従うだけです」
夫は焦燥に駆られ、再び見当違いの方向へとを伸ばした。
「だったら……だったら莉子も、今から養子縁組すればいいだろ! 類がいるなら今すぐいてやる! 俺が承諾するから、連れてけよ!」
連れてけ。
この男は、最の最まで、自分の実の娘を邪魔な荷物としてしか見ていなかった。
「今から養子縁組をすれば、あの子は『婚のついでに追いされた子供』になってしまいます」
私は夫の目を真っ直ぐに見据え、語語を刻みつけるように言った。
「父親が倫相と自由になるために、母親に押し付けられてを追いされた子供に……私はあの子を、そんな惨めなには絶対にさせません」
「じゃあ……どうすんだよ!?」
「あなたが、父親をやりなさい」
私の静かな宣告が、内に響いた。
「莉子の法な父親は、あなたです。戸籍にも、そうはっきりとかれています。あなたはこの、度たりとも父親らしいことをしませんでした。話しかけず、絵も見ず、運会にも来なかった。そのすべてを、私が代わりとなってやってきました。……今度は、あなたの番です」
「お、俺で……!?」
「あなたの子です。勝にあの子をゴミのように放りすことは、私が絶対に許しません」
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義母がをいた。
「……秀」
義母の目は、徹に息子を捉えていた。
「あんたが育てなさい。あんたの作った子でしょ。……私も、できる限りの伝いはするわ。実の孫なんだから」
義母は私の方を向き、震える声で言った。
「莉子ちゃんのことは……私が……」
「……莉子と、呼び捨てにしてあげてください」
私が遮るように告げると、義母は息を呑み、さく頷いた。
「……ええ」
、に馴染んでしまった「莉子ちゃん」という儀な呼び名は、そのではすぐにはせなかった。義母自、そのことのみを痛している表だった。
夫は母親と私を交互に見つめ、やがて力なく線をへと落とした。
「……好きにしろよ。会うのは、勝だ……」
それが、夫のからた、莉子と私に関する最初の、そして唯の承諾だった。
「婚協議の案は、向井弁護士がすでに作成してくださっています」
私は封筒の残りの類を卓のに置いた。封はけなかった。
「貞の慰謝料は、あなたと野島マキの双方に請求します。財産分与として共の預貯を正確に折半し、と公平の養育費については公正証を作成します。支払いがでも滞れば、直ちに与と座を差し押さえる条項を入れます。親権については、の息子のを確認したで記載します。……あなたも、ご自で弁護士をててください。
私の代理は、あなたには切の助言をいません」