"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第29話
たとえ嘘を信じ込まされていたからだとしても、あの子が直接にして胸を痛めた言葉の傷は、決して消えることはありません」
義母はをげたまま、絞りすように答えた。
「……そうよね。本当に……その通りだわ……」
それ以、義母は弁解しなかった。
積みなった差別と遇は、度をげたくらいで帳消しになるはずがない。消えないものは消えないと告げることこそが、この、私が義母に対して示せる唯の誠だった。
「それから――」
私は膝のの封筒から、カラー印刷した枚の用を取りした。
「今回の婚の、もうつの決定な理由です」
コンビニでプリントアウトしてきた、夫のスマートフォンのトーク画面の証拠写真を、付順に卓のに並べた。
夫が腰を浮かせ、を伸ばそうとした。
「お……それ……!」
「あなたのスマートフォンです。暗証番号は、の誕でした」
夫はを伸ばしかけた姿勢のまま、縛りに遭ったように固まった。
母親の目のでそのを力づくで奪い取れば、何をもみ消そうとしたのかを自ら証することになる。夫には、もうを伸ばす度胸すら残されていなかった。
義母が枚目をに取った。
『の。駅で偶然会えたの、嬉しかった』
義母の目が、送信者名のところで止まった。
「……また、この女なの……?」
「はい。
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のから、関係が再燃していました」
夫が苦し紛れにをいた。
「あ……あれは偶然駅で見かけて、向こうから声をかけてきたんだよ!」
「黙りなさいッ!」
義母の声がした。
義母は枚目、枚目とめくっていった。
『賃万。万ならせる。から』
義母のが止まり、夫を睨みつけた。
「あんた……活費を減らしたって言ってたわよね? 会社の業績が悪化して、料ががったからだって……! 私、それを信じてゆきさんを責めてたのよ!?」
夫は答えられず、線を泳がせた。
「から活費を万円減額すると、に通告されました」
私が代わりに答えた。
「から、あの女のアパートの賃補助として毎万円が流れています。与細の示を求めても、度も見せてくれませんでした。活費から削ろうとしていた万円は、その倫相への送の穴埋めです」
枚目。のホテル宿泊の領収と、『楽しかったね』のメッセージ。
枚目。。
『今度こそ緒になれるよね。子供たちはゆきさんに任せればいいじゃん』
『任せる。ゆきならとも引き取るだろう。あいつは莉子を置いていけない』
義母は声にして読むことはしなかった。だが、その唇が刻みに震え、文字を追っていた。
そして――。
『でも本当に莉子を連れてこないよね? 私、今さら子育てなんて無理だよ』
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義母はを持つをガタガタと震わせ、絶句した。
「……この女……自分がんだ実の子供を……」
「はい。あの女にも、莉子を引き取る気など微もありません。実の父親と実の母親が揃って、自分たちのんだ子供を私に押し付け、だけで『自由』になろうと計画していたのです」
義母は枚のを両で揃え、卓の央に叩きつけるように置いた。
そして、夫を鬼のような形相で睨みつけた。
「あんたたち……それでも親なの!?」
声は張りげていなかった。だが、そのく絞りすような響きは、部の空気を極限まで圧迫した。
「んだ女と、認した男が……揃って、自分の子供をに押し付けて自由になるって……体どういう神経をしているのよッ! 番親らしいことをしてくれたのが、血の繋がっていないゆきさんだけだったなんて……親として恥ずかしくないの!?」
義母は激しく胸をさせた。
「私だって同じよ……! 実の孫を、も『よその子』と呼び続けて……! こので、あの子に本当のを注いでくれたのは、ゆきさんだけだったんじゃないの!」
夫はもはや、母親の顔を見げることすらできなかった。
反論の言葉など、この男のには文字も残されていなかった。
の涙も、の座も、すべては計算ので演じられた茶番だった。だが今、計算するための材料はすべて私のによって々に打ち砕かれていた。
「連れてけ」と言えば、妻が泣く泣く引き受ける。