"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第28話
義母が、戸籍謄本からゆっくりとをした。
そのを自らの膝のに置き、隣の息子をじっと見つめた。その瞳には、もはや庇いてする母親の甘さは微も残っていなかった。
「……ゆきさん」
義母が、をうようない声で言った。
「あの子が夜にをした……救急病院へ連れてったのは、あんただったわね」
「はい、私です」
「学の運会も……授業参観も……」
「すべて私できました。、度も欠かさずに」
義母は固くを結び、台所の壁へと線を向けた。
そこには、あの褪せた赤い折りのカーネーションが、今も静かに貼られていた。義母はこの、見ないふりをして通り過ぎていたその壁を、穴がくほど見つめていた。
「……をしたって聞いた、私は『夜に騒ぎして、げさな嫁だ』ってで笑ったわ……」
義母の声は、りでも涙でもなく、自らが犯してきた罪をつずつ数えげるような、平坦でい調子だった。
「運会も、秀は仕事なんだから、あんたでくのが当たりだとってた。『よその子の学事に、うちの息子がる筋いはない』って……。着ているも、靴も、費も唱団の謝も、全部あんたのパート代からさせて……『勝に引き取ったんだから当然だ』って……」
私が頷くたびに、義母の指先がテーブルクロスをく握りしめた。
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「反抗期があったわよね。の、あの子がを利かなくなって、あんたが毎晩部のに座り込んで声をかけてた……私、あんたに向かって『育て方が悪いからだ』って鳴りつけた……」
義母はそこで言葉を詰まらせた。
「唱団の発表会があるってあの子が言ったも、私は『見にく暇なんてない』ってたく突き放した……。実の孫の発表会だとっていれば、万難を排して駆けつけたのに……」
義母は壁から線を戻し、私を真っ直ぐに見つめた。
「全部ってたのよ……。っていながら、『よその子』だからとたくあしらってきた……。あの子が……秀の……」
その先を、義母は言葉にすることができなかった。
夫がソファのでじろぎをし、擦り寄るような声をした。
「……母さん。莉子のことは頼むよ。ゆきがてくって言うなら、あの子は俺の子なんだから、母さんが面倒を見てくれれば……」
ガタアンッ!!
凄まじい音をてて、義母がちがった。
卓の子がろへと吹きび、義母のがテーブルを激しく叩きつけた。並んでいた湯呑みがね、い茶がこぼれ落ちる。
「ふざけるんじゃないわよッッ!!」
義母の全から、凄まじい気が噴していた。
「自分がで作った倫の子供を、妻にも育てさせて……! 育てさせた事実すら母親の私に隠し通して……! 挙句の果てに、婚する段になってまで、ゆきさんに押し付けるつもりなの!?」
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押し付ける。
義母はその言葉を、実の息子に向けて叩きつけた。
ほんの分、義母は私に向けて同じ言葉を吐き捨てていたのだ。
『娘までこっちに押し付けるな』と。
あのの「娘」は義母にとって赤のだった。だが今、その言葉は、自らの血を分けた実の孫を放りそうとする愚息へと、刃の向きを変えて突き刺さっていた。
夫はちがった母親を呆然と見げ、を半きにしたまま完全に直していた。
義母は荒い息をえながら、ゆっくりと子を引き戻して腰をろした。
そして、私の正面へと向き直った。
「……ゆきさん」
義母の声が、掠れるようにくなった。
「……本当に、ごめんなさい」
義母は両を膝に揃え、々とをげた。
テーブルに額がつくほどではなかった。だが、義母が私に対してをげる姿を、私はの結婚活のでただの度も目にしたことはなかった。
「私は……何もらないで……あんたにばかり、酷いことばかり言って……」
私はその髪の混じったを、静かに見つめていた。
「……お義母様にも、私は何度もく傷つけられました」
義母のが、ピクリと止まった。
「『莉子ちゃん』という儀な呼び方。分しか用されないお産のお菓子。秀さんのにだけ置かれる煮物の鍋。『あんたの親戚が引き取れ』『あんたががらないから秀がだ』……それらはすべて、お義母様のから直接放たれた言葉です。