"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第26話
私の膝のには、みのある茶封筒が通。
「もう限界です。婚しましょう。と公平の息子は、私が連れてきます」
「は、娘も連れててけよ」
「そうよ。娘までこっちに押し付けるんじゃないわよ」
冒の修羅が、再び寸分違わぬ形で繰り返された。
夫は吐き捨てるように笑い、義母は酷に私を睨みつけていた。
、私が母親として注いできたすべてのを、このは平然とゴミのように扱ってみせた。
私は膝のの封筒にを置いたまま、の顔を順番に見据えた。
「……無理だって、あの子は」
夫の顔が、みるみるうちに青ざめていく。義母はまだ何も分かっていない顔で首を傾げている。
私は、言葉の続きを、静かに、だが部の隅々まで響き渡る声で放った。
「あの子は……あなたと、浮気相のにできた子供でしょう」
ことり、と卓ので義母の湯呑みが微かな音をてた。
「……え?」
義母は呆気にとられたように私を見つめ、それから隣の夫の横顔へと線を移した。
「な……何言ってるのよ。莉子ちゃんは、あんたの親戚の……」
「違います」
私は義母の目を真っ直ぐに射抜いた。
「それもすべて、秀さんのついた真っ赤な嘘です」
夫は完全に言葉を失い、青褪めた顔のまま、私の膝のの封筒を凝して固まっていた。
私は封筒の糊をし、から枚の公な用を引きした。
広告
役所の角印が鮮やかに捺された、戸籍謄本だった。
それを卓の央、義母の目のへと静かに滑らせた。
「役所で取得してきた、このの戸籍全部事項証です。読んでみてください。莉子の欄を」
義母は震えるで老鏡をかけ、恐る恐るそのを持ちげた。
者・瀬秀。妻・ゆき。男・。男・公平。
そして――女・莉子の分事項の欄。
義母の線が、そのでピタリと凍りついた。
用を握る指先が、刻みに震え始める。
「……これ……」
義母の声がかすれていた。
「実母の欄に……野島マキっていてある……。そのに、認……」
「の、あの女性です」
私は逃げを塞ぐように、淡々と事実を積みねた。
「お母様も、その名には聞き覚えがおありのはずです。の、お母様のご自宅で、私が泣きながらお話ししましたよね。『夫が、野島マキという派遣社員の女性と倫している』と」
義母のが半きになり、声がない。
「あの、私はお母様につだけ隠していたことがありました。秀さんに『臓の悪い母さんには絶対に言わないでくれ、ショックで壊れてしまう』と泣きつかれ、言えなかった真実です。……あの、野島マキは妊娠ヶでした」
「……秀……」
義母はを握りしめたまま、信じられないものを見るような目で隣の息子を見つめた。
広告
「秀……嘘よね? 何かの違いよね……?」
夫は答えなかった。卓の目をただ凝し、脂汗を額に浮かべていた。
「答えなさい!!」
義母の絶叫が、狭いリビングに鳴のように轟いた。
、こので暮らしてきて、義母が実の息子に対してこれほど凄まじい声を浴びせる姿を、私は度として見たことがなかった。
夫はい、苦しい息を吐きした。
「……俺の子だよ」
吐き捨てるように、そう言った。
罪をから認めた顔ではなかった。のに晒され、認めざるを得なくなったことを逆みするような、浅ましい表だった。
、私ので座したと、寸分違わぬ卑劣な表だった。
「その子がまれての、野島マキが育てられないと言って、秀さんの元へ置きりにしていきました」
私はを交えず、淡々と事実の刃を突きて続けた。
「秀さんはその歳の子供をがの玄関に連れてきて、私に言いました。『母さんにもにも公平にも、ゆきの親戚の子だと言ってくれ。頼む』と」
「……私に、も嘘を……?」
義母の震える声に、私は静かに頷いた。
「はい。そして私も、その嘘に加担しました。なぜだか分かりますか? 本当のことを言えば、莉子はこのので『倫の子』として扱われることになる。お母様のから、その残酷な言葉がびすことだけは、何としても防ぎたかったからです」
「私が……そんな酷いこと……」
「言いますよ、お母様なら」
私は容赦なく切り捨てた。