みかん小説
本棚

"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第21話

……ただし、ご主のスマートフォンを無断で操作して撮することについては、プライバシーの観点から法なリスクもゼロではありません。ですから、私から『写真を撮ってください』と指示することはできません。あくまで、ゆきさんご自の判断に委ねます」

「……分かりました。自分で判断します」

私の決は、すでに固まっていた。

「次に、銭面に関する理です。婚が成した、婚姻期に夫婦で築きげた共財産は、名義の如何を問わず原則として分のずつ財産分与の対象となります。預貯については、ご主の座であっても示を求めることができます。ご自宅の産はどうなっていますか?」

「夫の単独名義です。宅ローンがあと残っていて、残は約千百万円ほどです。現の建物の資産価値も、ほぼ同等かそれ以だといます」

「であれば、産は実質な分与対象のプラスの財産にはなりませんね。ご主がそのままみ続け、残りのローンを単独で返済していく形が現実でしょう」

「嫌ならていけ。てったってえないだろう」という夫の言葉が、脳裏をよぎった。

夫は、私が円も持たずにつで放りされると信じ込んでいる。もも、すべて自分のものだとい込んでいる。その勝な提が、この法律事務所の机ので、枚ずつ音をてて剥がされていく。

広告

「息子さんおの養育費については、必ず公正証を作成してください。支払いが滞った、裁判を起こすことなく直ちに料や座を差し押さえることができる執認諾文言を盛り込みます。これをわない代理はいません」

「はい」

「それから……これは私からのな助言ですが」

向井弁護士は机のの類をえながら、声を落とした。

「お母様に真実をかすが来るに、ご主の戸籍謄本を度、役所で取得してご覧になっておくことをくお勧めします。ゆきさんは現、ご主の戸籍に入っていらっしゃいますから、委任状なしでご自の権利として窓で取得できます」

「夫の戸籍謄本……ですか?」

「ええ。何がかれていて、何がかれていないのか。それをあらかじめ正確に把握したで対峙する方が、無駄な押し問答を省き、話しいを迅速にめることができます」

「分かりました。曜の休みに取ってきます」

「……決戦のは、いつ頃をお考えですか?」

「の最初の曜、です」

私は迷うことなく答えた。

「曜の午であれば、義母は決まってがにやってきます。と公平は部活で、莉子も唱団へ送りせます。子供たちのいない静かなで、夫と義母と私のだけで、すべての決着をつけます」

その対決ののに、義父の回忌が巡ってきた。

広告

、曜。

午、菩提寺の本堂で読経と焼を済ませ、昼からは義母の自宅の座敷で仕し料理を囲む会となった。

座敷の最座には義母の節子、その隣には義母の妹である歳のフミ叔母が座った。夫が叔母の向かいに陣取り、と公平が並び、莉子は私のすぐ隣に腰掛けた。

私は座敷に落ち着くもなく、台所と座敷を往復し、お吸い物を温め直し、お茶を注ぎ、ビール瓶を運んだ。このの法事において、私の居所は最初から畳のではなく、油染みた台所のにしかなかった。

通りの仕を終え、ようやく莉子の隣に腰をろしただった。

義母がビールのグラスを置き、フミ叔母に向かってこれ見よがしにをいた。

「フミさん、あんたにはまだ詳しく話してなかったかしらね。その、莉子ちゃんのこと」

フミ叔母が箸を止めて義母を見た。

「ゆきさんの親戚の子まで、うちの秀が引き取って面倒を見てやってるのよ。に向こうの内にいろいろと事があったとかで、ゆきさんの方から泣きつかれてねえ」

私の方から頼み込んだのではない。連れてきたのは秀の方だ。

喉までかかった叫びを、私は必に押し殺した。莉子がすぐ隣に座っていたからだ。

「うちの正真正銘の孫は、と公平のだけなんだけどね。

まあ、莉子ちゃんも秀のけで、うちの敷居を跨がせてやってるのよ」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: