"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第6話
義母もまた、帰宅する際にその絵のでを止めることは度たりともなかった。
「お父さん、私のこと嫌いなのかな……」
その夜、布団に入る直、莉子がパジャマの袖をぎゅっと握りしめながら、消え入りそうな声で私に尋ねてきた。
「そんなわけないでしょう。お父さんはね、お仕事のことでがいっぱいで、ちょっぴり疲れちゃってるだけよ」
私はそう答えながら、莉子の柔らかな黒髪を優しく撫でろした。
嘘はついていないつもりだった。ただ、夫ののがいったい何のことでいっぱいになっているのかを、私自が莉子に言えなかっただけだった。
曜の朝、台所のゴミ箱の底に、さく丸められたのATMの利用細票が捨てられているのを見つけた。
そっと拾いげて広げてみると、引きし額の欄には「50,000円」と印字されていた。付はの週の曜。
同じような印字の片を、私は先も目にしていた。
夫の毎のお遣いは万円であり、それは毎に私が渡しの封筒で渡している。それとは別に、計のにある夫個の座から、毎万円というがどこへ、何のために引きされているのか。
私はその細票を元の通りに固く丸め、静かにゴミ箱の底へと戻した。
「どうしてすぐにをてかないのか」
もしがこの状況をれば、そう疑問にうことだろう。
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私自、夜眠れない布団ので、何度も自分自に問いかけてきた。
私のパート代は取りでに約万円。もしの息子を連れてこのをるならば、しく借りるアパートの敷や礼、これからの学費や活費のすべてを、から計算し直さなければならない。
それでも、計算さえすれば、数字のでは何とかやっていけなくはなかった。
問題は、てったの銭ななどではなかった。
私がこのをていくということは、莉子をこの酷なへ残していくことをしていた。
私には、あの子を連れてをる権利がなかったのだ。
息子は、私が痛みに耐えて産み落とした実の子だ。夫がどれほど喚き散らそうとも、話しいの席で私が母親でなくなることは法にあり得ない。
だが、莉子は違う。
莉子に関して私が持っているものといえば、分の作り弁当の記憶と、の夜に抱きしめた体温の触、そして計簿の隅にき連ねた細かな支の数字だけだった。
、あの子がこのの玄関先にっていたあの夜。夫がにした言葉と、そのに夫が頑なに拒み続けたある続きが、私のをこのに縛り付け続けていた。
。私は度だけ、夫を厳しく問い詰めたことがあった。
「あなた、本当は誰と会っているの?」
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当、私は歳で、はまだ歳、公平は歳だった。
夫は私ので崩れ落ち、卓に額を擦り付けて激しく涙を流した。やがてに入ってきた義母が引に話を収束させ、すべては「終わったこと」にされた。
あの、私の元へ返ってきたもののさを、私は今でもはっきりと覚えている。
もしも、あれとまったく同じものが再び私の元へと返ってくるのだとしたら、今度の私は体どうするべきなのか。その答えが自分ので完全に定まらないうちは、軽々しくをくわけにはいかなかった。
そしての第週。私はその答えと、真正面から対峙することになった。
、曜。
スーパーの惣菜部の調理で、私は百度の油のにち、唐揚げ用の鶏肉を次々と放り込んでいた。を過ぎると、昼の総菜コーナーの棚を埋めるためのパック詰めが本格化する。秒たりともを休めることのできないピークの帯だった。
「瀬さん、なんだか顔が酷いわよ」
隣の作業台でコロッケのを素くつけていた杉本さんが、元をかしたままい声で言った。
杉本さんは歳。この職で私よりく働いている先輩で、惣菜部ので誰よりも仕事の段取りがく、頼りにされているだった。
「いえ……し寝なだけです」
「寝の顔じゃないわよ、それ。完全に、何かあったの顔だわ」