みかん小説
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"深夜1時、母は開けるなと言った" 第15話

夜を過ぎると、のが止み、宅はんだような静寂に沈んだ。 リビングのかりを消し、私は廊の暗いフットライトのかりだけを頼りに、ダイニングの子に座って待っていた。 母はこたつの横に横たわったまま、毛布を被ってじろぎつしなかった。眠っているのか、息を殺して怯えているのかは分からなかった。

チ、チ、チ、と、壁掛け計の秒針がを刻む音だけが、の奥に響く。

分。 分。 分。

そして、い針とい針が、の文字の真でなりった。

午。

その瞬、の空気が数度がったような錯覚を覚えた。 私は息を吸い込み、暗ので構えた。

——ピンポーン。

澄んだ、無質な子音が鳴り響いた。

回。 そして回。 回。

途切れることなく、定のリズムでチャイムが連打された。 誰かがインターホンのボタンのに親指を乗せ、体を預けているかのような、執拗で粘りつくような連打だった。

こたつから、ガバッと母が起きがった。 髪を振り乱し、霊のような取りで、母はふらふらと廊へと歩きした。 その目は虚ろで、まるでチャイムの音に操られる操り形のように、まっすぐに玄関へと向かっていく。

「母さん、止まりなさい」

私がちがり、母の肩を掴もうとしたが、母は恐ろしい力でそれを振り払った。

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「けなきゃ……けないと、終わらないのよ……!」

母は玄関のにり、素のままたいタイルを踏みしめた。 そして、しいディンプルキーのサムターンにを伸ばし、親指と差し指でそれを抓んだ。

「けたら、あのの奴隷だよ!」 私はろから母の胴体に腕を回し、力任せに引き戻した。

「して! あんたに何が分かるのよ! けて、座して、あのが納得するまで踏み躙られれば、それで済むのよ! このからてけば、あんたにも迷惑はかからないでしょう!?」

母が私の腕ので暴れた。老いた女のどこにこれほどの力があるのかとうほど、激しい狂乱だった。 爪が私の首にい込み、痛みがる。

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。 チャイムの音は止まらない。をつんざくような子音のに、からドアをのひらで平打ちするような、バアン、バアンという激しい衝撃音が混ざり始めた。

「子さん!」 ドアの向こうから、佐伯玲子の声が響いた。 昨夜までの静けさは消え失せ、底れぬ憎悪と執が剥きしになった、く鋭い叫びだった。

「子さん、いるんでしょう! 類を送りつければ済むとったの!? 私からを奪っておいて、あの男のに逃げを許して、自分だけ綺麗な母親のままで逃げ切れるとったの!? けなさい! 顔を見せて、謝りなさいよ!」

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母がピタリときを止めた。 私の腕ので、母の全から力が抜け、ずっしりとしたみが私の元に崩れ落ちた。

「……母さん」 私は息をえながら、元に倒れ込む母を見ろした。

「母さんは、本当にあのに謝りたいの? それとも、怖いから、痛い目に遭いたくないから、言われるがままにドアをけようとしてるだけなの?」

母はに額を押し当て、肩を震わせた。 からは、執拗なノックとドアノブをガチャガチャと激しく揺らす音が響いている。 ガチャリ、ガチャリ、と、施錠されたラッチが鳴をげている。

「……嫌……」

母のから、掠れた声が漏れた。 「……けたくない……。怖い……あんなの、見たくない……」

の沈黙と従属の果てに、母が初めて自分の志で吐きした、拒絶の言葉だった。

私は母からをし、玄関ドアのに歩踏みした。 鍵はけない。ドアガードもさない。 私はドアのスコープに目をづけることもせず、い鋼板に向かって、腹の底から声を張りげた。

「佐伯玲子さん!」

のノックの音が、ピタリと止まった。 荒い息遣いだけが、郵便受けの隙から漏れ聞こえてくる。

「類はすべて送付しました。法な請求があるなら、すべて面で、代理を通じてってください。 警察にはすでに、昨夜と今夜の事系列、防犯カメラの映像、すべて通報済みです。

今夜のこの訪問も、ストーカー規制法に基づく警告の対象になります」

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