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"5年付き合った社長に退職届を出した日、私だけが知らなかったこと" 第9話

契約の向こう側

相原グループから仕事の依頼が来たのは、数週だった。

理さんは見積を机に置き、私に事を話した。

「担当を断っていい。受けるかどうかは、会社として私が判断する」

提示された条件はよかった。ただ、私と会うためだけの案件なら、受けるべきではないとった。

私は目と業務範囲を確認した。

欧州企業との提携に関する調査と、交渉準備の支援。期、成果物、支払いの条件もかれていた。

「仕事として必なものなら、担当できます。ただし、私への私な連絡を仕事に混ぜないことを条件にしてください」

理さんは頷いた。

会議には必ず別の担当もる。連絡は共の窓へ。面会所やも会社で管理する。

条件を文にし、相の承を得た。

理さんは、受注してからでも条件を破られたら対応を変えると言った。きな顧客だからする、という話にはしなかった。

私は担当する社員にも窓のルールを共した。私の過をらないまで、相の嫌にわせてかなくていいようにしたかった。

打せの記録は、毎回、両社の担当者へ送った。

私は、会社の持ち分も契約に基づいて取得していた。会社の利益を考えることと、自分の境界を守ることは、どちらも必だった。

怜司は会議にてきたが、最初の挨拶以、私活の話をしなかった。

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私が資料を求めると、担当者に提するよう指示した。以のように、会議が終わったあとも私だけを残そうとはしなかった。

資料の誤りを指摘すると、彼は確認して訂正した。

そんな普通の対応を、特別な優しさとして受け取るつもりはなかった。

帰り、私は歯科へ寄った。

森川先輩はドイツで資格を取得し、現の歯科医院で働いていた。友を介して予約した際、同じだったことを伝えていた。

待で名を呼ばれ、顔をげると、彼がっていた。

「本当に藤沢さんだったんだ」

私は笑った。

「先輩こそ。こんなところで会うとはいませんでした」

診察では、彼は昔の話をしなかった。説をして、私の返事を待ち、痛みがないか確認した。

治療が終わると、次の予約についてスタッフが説した。

その、共通の友を交えた事で、もう度会った。

私たちの話は、の先や文化祭から始まった。彼は誰が何を言ったか、妙に細かく覚えていた。

帰り際、彼が聞いた。

「ここでの暮らし、慣れた?」

「しずつ」

「困ってない?」

私は答えを考えた。

丈夫だと、すぐに言う癖があった。配を掛けるのも、みを見せるのも嫌だった。

「仕事は好きです。でも、まだわからないことはいです」

彼は頷いた。

「それは、私もまだあるよ」

彼にも、慣れるまでの失敗があった。言葉がりずに誤解されたこと、役所で直したこと。

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私は聞きながら笑った。

帰宅すると、仕事用の端末に相原グループから資料が届いていた。

私は翌営業に確認すると返信し、閉じた。

私用の携帯話には、先輩から今のお礼が来ていた。

返事をしたあと、無理に会話を続けようとはしなかった。

翌週、散歩に誘われた。予定がわないと伝えると、また都がついたらと返ってきた。

それだけだった。

断っても、空気が変わらないことが、いのほか嬉しかった。

私は自分の予定表をき、空いているをつ送った。

そこから、仕事以の約束がしずつ増えた。

度目の事で、彼がパスタを茹で過ぎたことは、しばらく笑い話になった。

怜司のことを話したとき、先輩は途で評価を挟まなかった。

「今、私にしてほしいことはある?」

そう聞かれ、私は首を振った。

「今は、聞いてもらえれば」

彼は頷き、私が話し終えるまで座っていた。

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