"5年付き合った社長に退職届を出した日、私だけが知らなかったこと" 第8話
謝るなら、触らないで
しい会社では、仕事内容と評価の基準が最初から共された。
うまくいかなかった案件は、どこでつまずいたのか話しった。成果がれば、誰が何をしたかを記録した。
初めての面談で理さんに褒められたとき、私はすぐには返事ができなかった。
「何か、気になる?」
「いえ。ただ、理由まで説してもらったのが、久しぶりで」
彼女は資料へ目を落とした。
「次はここを改善してほしい。褒めて終わりじゃないからね」
私は笑って、メモした。
渡航から3かほどたった夕方、建物をると、怜司が通りの向こうにいた。
私はを止めた。
彼はを渡り、私のへ来た。
「仕事、終わった?」
昔のような声だった。
「何の用ですか」
怜司の表が変わった。
「真由は会社をれた。調査で、評価への当な介入も確認された。会社は必な訂正をする。代理にも資料をしている」
「弁護士から聞いています」
「関わったたちにも、処分がた」
私は頷いた。
「それは、会社として必なことです」
彼は黙った。
「だから、帰ってきてほしい」
私はバッグの紐を握り直した。
「帰りません」
「彩乃、私は……」
彼が腕を伸ばした。私は歩がった。
「触らないでください」
それでも、彼は私の肩をつかんだ。顔がづき、私は体を捻った。
が、彼の頬に当たった。
周りのが振り返った。私は彼かられ、建物の入へ戻った。
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「づかないで」
声がきくなった。
怜司はち止まった。
「ごめん。私は、ただ……」
「何をしたかったかではなく、やめてと言ったらやめてください」
私は携帯話をした。
「次に触ったら、警察へ連絡します」
通りかかった女性が、私に丈夫かと聞いた。私は頷き、入の警備担当にも声を掛けた。
怜司は、それ以づかなかった。
私は理さんに連絡し、そのに来てもらった。
会社へ戻ると、が震えた。を持っていたカップを机に置いた。
理さんは隣に座った。
「今、ここへ来ても取り次がないようにする。必な連絡は、代理へ回そう」
私は頷いた。
自分がっているのか、怖いのか、すぐには分けられなかった。どちらでもいいとった。もう会いたくないと伝える理由には、分だった。
その夜、来事を記録し、弁護士へ送った。
怜司からは代理を通じ、謝罪が届いた。
私は返事をしなかった。
好きだったを、度触れられたらいして戻るとわれたことが、悔しかった。
週末、理さんと昼をとった。
は、へるのをためらった。入のにまたっているのではないかと、何度も窓を見た。
そのことも理さんに伝えた。彼女は緒にまで歩き、帰りも送ると言った。
丈夫なふりをするより、今、必なことを言うほうがよかった。
私は待ちわせのを決め、着を用した。
彼女は仕事の話をするに、調子を尋ねた。
「まだ、腹がっています」
私が言うと、彼女は頷いた。
「それでいいとう」
私はフォークを取った。
「でも、仕事は続けたいです」
「もちろん。あののことを理由に、彩乃さんの席をなくすつもりはない」
窓際のテーブルには、のが差していた。
私は事を終え、翌週の予定をいた。
怜司に会ってしまっただけで、しい暮らしの全部を奪われたくはなかった。
予定表には、私が引き受けた仕事と、自分で決めた休が並んでいた。
曜には、学代の友に紹介された歯科の予約があった。
受付から届いた確認メールに、懐かしい名が載っていた。
森川直。の、つの先輩だった。