"5年付き合った社長に退職届を出した日、私だけが知らなかったこと" 第7話
残っていなかった帰り
「どうして、今さらそんなことを言うの」
真由は声を落とした。
「嫌いなら、こんなに助けてくれるはずないでしょう。昇も、特別報酬も……」
怜司は線を逸らさなかった。
「あなたのお父様との関係を優先しました」
真由が黙った。
相原グループには、経営権をめぐる対があった。真由の父親は10%の株式を保し、怜司の経営方針を支持していた。
その関係を壊したくない。そう考えて、怜司は真由の事に過度な配慮をした。特別報酬についても、彼女の父親との関係が判断に響した。
「それを恋の約束に見せたのは、私の責任でもあります。ただ、結婚するという話はしていません」
「お父さんのためだったって言うの?」
真由の声がくなった。
「私は、婚までしたのに」
怜司は度、周囲を見た。
「ご庭のことを、ここで私に決めさせないでください」
彼は秘へ目を向けた。
社員には自由に帰るよう伝え、撮したものを拡散しないよう求めた。
事の判断を恋の許しだけで覆すことはしなかった。真由には、調査への協力と資料の保全を求めた。
彼女がそので謝れば、すべて済む話でもなかった。
怜司は運転へ戻り、指定したマンションへ向かうよう伝えた。
部のでち止まった。
持っていた鍵を使うに、彩乃の代理から来ていた連絡を読み直した。
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無断で入しないよう、はっきりとかれていた。
彼は鍵をポケットへ戻した。
管理に居所を尋ねても、教えてはもらえなかった。秘へ話し、本が以共していた予定と、代理から届いた報だけで確認するよう伝えた。
しばらくして、返事が来た。
「川理さんと渡航されています。今の連絡は、代理へということです」
怜司は廊の窓を見た。
何度も、ここへ来れば会えた。彼女がをても、数には戻った。迎えにかなくても、待っていれば連絡が来た。
今回は、どこにも待つがいなかった。
ミュンヘンに着いた私は、数、仕事をしなかった。
差に慣れず、朝く目が覚めた。部の鍵を確かめ、窓をけると、らないの音が入ってきた。
理さんは、仕事の連絡を必な範囲にとどめた。
「まいと続きが先。働き始めるは、きちんと確認してから決めましょう」
私は頷いた。
会社が依頼した専に相談し、就労に必な続きをめた。待つ、散歩をし、活に必なを覚えた。
本の弁護士から、会社の通が撤回されたという連絡が来た。
事が確認済みとしていた話には、裏付けが見つからなかった。監査部の名も、無断で使われていた。
私は訂正の範囲を確認した。同じ社員へ届く形でらせてほしいと、代理から求めてもらった。
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退職などの精算も、別にんだ。
怜司の個な振込は返した。必な請求と、名誉に関する問題は、会社と正式に話しうことにした。
返を見て何をったかは、聞かなかった。
ある朝、以の同僚からいメッセージが来た。
〈何も言えなくて、ごめん〉
私はしばらく画面を見た。
返事をくか迷い、今は落ち着いて暮らしています、とだけ送った。
自分の活をらせるために、過のすべてを説する必はなかった。
続きがい、正式に働き始めた、私はしい机へノートを置いた。
理さんが顧客の資料を渡した。
「この件、任せてもいい?」
私は内容を確かめた。
「まず、期限と担当範囲を確認させてください」
彼女は笑った。
「もちろん」
私は子を引いた。
最初の週は、以ならで抱えていた修正を、担当者と分けた。見がい違えば、顧客へ何を約束しているのかを確かめた。
誰かの顔だけで結論が変わらない。そのことに慣れるまで、私は何度か、これでいいですかと聞き直した。
理さんは、根拠があるなら自分で判断していいと答えた。