"「産めない」と婚約破棄された私が、52歳の夫の双子を授かったら" 第8話
今さら、聞き直さないで
美咲さんは、予定をし延ばしてからオーストラリアへ戻った。
帰る朝、浩さんがスーツケースをに積んでいる、彼女は玄関で私を見た。
「次の健診、いつですか」
私は付を答えた。
「お父さん、すぐにでんじゃうから。何かあったら、ちゃんと聞いてください」
「私が聞くんですか」
彼女は瞬困り、それから笑った。
「お父さんにも、言っておきます」
それが、別れるの会話だった。
連絡は最初、浩さんのところにだけ来た。やがて、彼女から私にもいメッセージが届くようになった。
〈今はべられましたか〉
い返事は求められなかった。べられたものをつくと、よかったです、と返ってきた。
妊娠5かになったころ、母がに来た。
妊娠したことはくかららせていたが、仕事の都で、ゆっくり会うのは久しぶりだった。保バッグに煮物とスープを詰め、玄関につなり私のお腹を見た。
「ずいぶん、きくなったね」
「いるから」
母は笑おうとして、先に泣いた。
触ってもいいかと聞かれ、私は頷いた。を置く母の指先が、したかった。
「よかったね」
私は母のに、自分のをねた。
夕のとき、母が直の話をした。
「結婚したそうよ」
「そう」
それ以は聞かなかった。
母は箸を置き、し迷ってから続けた。
「おばさんが、向こうのお母さんに会ったんですって。
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あなたが双子を授かったと聞いて、本当なのかって、何度も聞かれたそうよ」
私は皿の煮物を見た。
「本当です、元気にしていますって、おばさんが答えてくれたの」
母の声には、抑えきれないものがあった。
「あのときは、ずいぶん言われたから」
「お母さん」
母が私を見た。
「私が妊娠しなかったとしても、あの言い方はひどかったよ」
母は黙り、それから頷いた。
「そうね。そうだった」
浩さんは余計なことを言わず、母の湯呑みにお茶をした。
翌の午、らない番号から話がかかってきた。
「紗季?」
声を聞いて、直だとわかった。3ほど会っていなかったのに、呼び方まで覚えていた。
「何か用ですか」
「妊娠したって聞いた。双子なんだって?」
「はい」
「おめでとう」
「ありがとう」
い沈黙があった。用が済んだなら切ろうとったとき、彼が聞いた。
「あの検査、違いだったのかな」
私は窓のを見た。物干し竿で、浩さんのシャツが揺れていた。
「違いではありません。医師は、妊娠できないとは言っていませんでした」
直は黙った。
「私、あのときも説したよね」
「……した」
「聞いてくれなかったんだよ」
彼が息を吸った。
「あのころは、母さんも俺も……」
「今から、その話をやり直したくありません」
自分の声は、ったより落ち着いていた。
「お祝いを言ってくれたことは、ありがとう。もう話はしないでください」
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返事を聞いてから、話を切った。
スマートフォンを置くと、指先がたくなっていることに気づいた。台所でをみ、子に座った。
夜、美咲さんからメッセージが来た。母が訪ねてきたと、浩さんから聞いたらしい。
〈お母さん、んでいましたか〉
私は返事をき、迷ってから直の話のことも付け加えた。彼女にまでらせる必はないとったが、もう自分のだけにしまう気にもならなかった。
しばらくして、話が鳴った。
「今さら、検査のことを聞いたんですか」
美咲さんの声が、いつもよりかった。
「そう」
「失礼ですね」
私は笑いかけたが、彼女は笑わなかった。
「私も、同じことをしましたね。の体の話を、自分に都よく決めつけて」
私は答えず、彼女の次の言葉を待った。
「もう、しません」
「うん」
私は頷いた。
窓のは暗くなっていた。シャツを取り込まなくてはといながら、もうしだけ、彼女と話した。