"「産めない」と婚約破棄された私が、52歳の夫の双子を授かったら" 第7話
缶のに残っていたもの
翌の夕は、箸の音ばかりが響いた。
美咲さんは2階の自にこもり、事のだけりてきた。浩さんが話しかければ答えるが、私には顔を向けなかった。
私は無理に話を振らなかった。べ終えると、自分の器を流しへ運んだ。
その夜、寝のドアが鳴った。
「今、しだけいいですか」
美咲さんの声だった。
扉をけると、さな菓子の缶を抱えていた。私が子を勧めると、彼女は缶を膝に載せたまま座った。
「私が養女だって、ってますよね」
「お父さんから聞きました」
彼女は頷き、蓋をけた。古い写真と、病院の類、折り畳んだ便箋が入っていた。
「お母さん、私がきくなったころに話してくれたんです。まれつき子宮に病気があって、妊娠は難しかったって」
私は缶を見たまま聞いていた。
「お父さんは、詳しい病名までは聞いていなかったみたいです。お母さん、話しづらかったんだといます」
美咲さんは、便箋を膝ので広げた。
「私には、血がつながってなくても自分たちの娘だって、何度も言ってくれたんです。ってるよって、面倒くさがったこともありました」
声が細くなった。
「でも、お母さんがいなくなってから、その話をするもいなくなって」
私はティッシュの箱を、彼女のくへ置いた。
「お父さんが再婚して、今度は赤ちゃんがまれるって聞いて。
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しかも、」
美咲さんは便箋を畳もうとしたが、折り目がわなかった。
「ようやく、本当の子どもができるんだってってしまったんです」
私はをきかけ、閉じた。
彼女は目を拭いた。
「そんなこと言ったら、お父さんがるのもわかってます」
「お父さんに、そう言われたことはありますか」
「ありません」
返事はすぐだった。
「じゃあ、そのことは度、お父さんに話したほうがいいといます。私にっても、あなたの聞きたい返事は、私にはできません」
彼女は俯いた。
「お母さんに、お父さんを頼むねって言われてたんです。を信じすぎるから、気をつけて見てあげてって」
「それで、私を疑ったんですね」
美咲さんはさく頷いた。
事を聞けば、すべて許せるわけではなかった。私の体にも、お腹の子どもにも、関係のない疑いを向けたことは変わらない。
「美咲さん」
彼女が顔をげた。
「今の話は、聞けてよかったです。でも、あの言葉は、まだつらいです」
「……はい」
「検査の結果がるまで、謝れないとっていますか」
彼女の指が止まった。
いのあと、をいた。
「浮気をしたって、決めつけました。財産目当てだとも。証拠もないのに」
私は待った。
「すみませんでした」
声はさかったが、聞こえた。
「お父さんがるからじゃなくて、紗季さんに謝らなきゃいけなかったんですよね」
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私は頷いた。
「謝ってもらえたことは、受け止めます。でも、すぐ元どおりにはできません」
「わかっています」
美咲さんは便箋を畳み、缶に戻した。
ちがってから、彼女がもうつ話した。
母親の預とアクセサリーは、相続の続きのときに受け取っていること。父親も再婚に、の将来について専に相談していたこと。
「だから、全部取られたわけじゃないって、本当はわかってました」
私は頷いた。らない話もあったが、今は尋ねなかった。
廊にると、美咲さんは斎のでち止まった。
私が寝へ戻るに、ノックの音が聞こえた。
「お父さん。話してもいい?」
翌朝、私が台所にくと、彼女が蔵庫をけていた。
「グレープフルーツ、べられますか」
「しなら」
彼女はつの皿に分け、つを私のへ置いた。
私は礼を言い、子に座った。
でべた。昨の続きを話すことも、無理に笑うこともしなかった。