"「産めない」と婚約破棄された私が、52歳の夫の双子を授かったら" 第3話
母のいた
「その、何歳だっけ」
画面の向こうで、美咲さんが聞いた。浩さんに呼ばれ、私はソファの隣に座ったところだった。
「31歳。紗季さんだよ」
「私と5歳しか違わないんだね」
私は挨拶をした。美咲さんはさく頷き、すぐに父親へ線を戻した。
「もう、緒にんでるんだ」
「結婚したんだから」
「あそこ、お母さんのだったのに」
浩さんのが止まった。
「美咲。そういう言い方はやめなさい」
「何て言えばいいの? おめでとうって?」
私は膝のでをねた。
「お母さんがくなって、まだ3だよ。どうして、私として変わらないのを選ぶの」
彼女の目に涙が浮かんだ。
浩さんが、スマートフォンを自分のほうへ向けた。
「齢のことを、紗季さんので何度も言う必はないだろう」
「だって、嫌だって言ったじゃない」
「お母さんを忘れたわけじゃない」
「でも、もう別のとんでる」
彼は返事をしようとして、を閉じた。
私はリビングの壁を見た。
梅のを刺繍した額が掛かっていた。隅には、さく「恵子」と縫ってある。
引っ越した、浩さんに、別の部へ移そうかと聞かれた。
「ここにあって、いいといます」
私はそう答えた。
それでも、美咲さんには私がここにいること自体が、母親を追いすようにえるのかもしれなかった。
「今は、ここまでにしよう。あとで私から連絡する」
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浩さんが言った。
「もういい」
通話が切れた。
彼は画面を見つめていた。私はちがり、キッチンへった。
湯を沸かしていると、背で音がした。
「ごめん。顔を見て話せば、しは落ち着くかとったんだけど」
私は振り返った。
「私の顔を見ても、お母さんが帰ってくるわけじゃありませんから」
浩さんが俯いた。
言いすぎたかとったが、取り消せなかった。
「今度は、で話してもらえますか」
「もちろん」
「お母さんが恋しいのはわかります。でも、私がここにいることを責められるのは、つらいです」
彼は頷いた。
「私がきちんと話す。紗季に任せたりしない」
私は戸棚から自分のマグカップを取った。彼の湯呑みにも湯を注いだ。
分を用していると、しずつの震えが治まった。
翌朝、私はいつもどおり勤した。
結婚しても、事務の仕事は続けた。自分の料で暮らせることは、放したくなかった。
夕方帰ると、浩さんは台所で根を煮ていた。
「美咲と話したよ」
私はバッグを子に置いた。
「私に言いたいことは聞く。でも、紗季を傷つける言い方は許さないと伝えた」
「返事は?」
「わかった、とは言った。ただ、しばらく話はしたくないそうだ」
私は頷いた。すぐに仲良くなれるとはっていなかった。
浩さんは鍋の蓋をけた。
「今は煮物です。見、お願いします」
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鍋を覗くと、根がずいぶんきかった。
「これ、が通るまでがかかりそうですね」
「切り直したほうがいい?」
「もう煮てるから、そのままで」
で鍋を見て、し笑った。
々の暮らしは、そんなふうに続いた。
会社を経営しているでも、では特売の卵を買ってび、ズボンの裾がほつれると自分で縫った。糸が針に通らないと、黙って私のへ持ってきた。
所には、私たちの齢差を気にするもいた。
買い物帰りに、顔見りの女性が声を掛けてきた。
「ずいぶんの方を選んだのね。佐伯さん、社さんだし、でしょう」
私は買い物袋を持ち直した。
「魚を選ぶのもなんですよ」
女性が黙ったので、そのままをげて帰った。
でその話をすると、浩さんは困った顔をした。
「嫌なことを言われたね」
「私からは、魚の話しかしていません」
袋から鯵をすと、彼が笑った。
結婚して2かほどたった朝だった。
卵を焼こうと油を温めた途端、むっとした匂いに喉が詰まった。私はを止め、洗面所へ駆け込んだ。
流しに両をついていると、浩さんが来た。
「紗季、どうした?」
答えようとしたが、吐き気が先に込みげた。