"追放された妻と「離婚しないで」と泣く愛人" 第17話
という面会交流の申し入れがあった。
私は拒絶しなかった。 けれど、子供たちのを何よりも優先した。
リビングで、に尋ねた。
「お父さんが、会いたいって言ってるけれど、どうする?」
歳の奏太は、画用から顔をげ、さく首を横に振った。
「……会いたくない」
「どうして?」
「僕の絵、ゴミ箱に捨てたから。僕、の子じゃないって言われたの、覚えてるもん」
奏太の声は静かだったが、迷いはなかった。 私は息子のを撫で、「分かったわ。無理に会う必はないのよ」と伝えた。
歳の陽菜は、し考えた、言った。
「私、回だけ会う。聞きたいことがあるから」
翌週、ファミレスの片隅で、私と同席の弁護士が見守る、陽菜と直のい面会がわれた。
現れた直は、ヨレヨレのシャツを着て、無精髭をやし、別のようにやつれていた。 陽菜のに座るなり、直はけない笑顔を浮かべた。
「陽菜……きくなったな。学、楽しいか? お父さんな、あのは仕事が忙しくて、ついイライラして酷いことを言っちまったんだ。でも、陽菜のことはずっと事な娘だとってるんだぞ」
陽菜は運ばれてきたオレンジジュースにをつけず、真っ直ぐに父親を見つめていた。
「お父さん」
「な、何だ?」
「ったに言った言葉、私は忘れないよ」
直の顔から、引き攣った笑みが消えた。
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「『陽菜は気が利くから、赤ちゃんの世話をさせればいい』って言ったんでしょ? 私のこと、娘じゃなくて、便利な召使いだとってたんでしょ?」
「ち、違う! あれは母さんが——」
「お父さんが言ったの。私、階で聞いてたもん」
陽菜はちがった。 歳の女とはえないほど、凛とした、びた背だった。
「もう会わなくていいよ。私、お母さんと奏太とでいる方が、ずっと楽しいから」
陽菜は私のを取り、度も振り返らずにをた。
ガラス越しに見えた直は、テーブルに突っ伏して、を抱えていた。 けれど、その姿に胸が痛むことは、ミリ単位ですら微もなかった。
自分で蒔いた種を、自分で刈り取っているだけだ。 誰かの尊厳を踏みにじったが、最に支払うべき、あまりにも当然の代償だった。
半。
私たちは、駅から徒歩分の、築の賃貸マンションに引っ越していた。
のほど広くはない。 けれど、向きのベランダからは温かいが差し込み、がよくリビングを通り抜けていく。
キッチンからは、煮込んだカレーのばしい匂いが漂っていた。
「お母さん! 見て、これ!」
リビングから元気な声が響き、奏太がスケッチブックを抱えてってきた。
以のような、の顔を伺う怯えた表はどこにもない。 焼けした丸い頬を赤らめ、得げに画用を広げて見せる。
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そこには、クレヨンと彩絵の具で描かれた、枚の絵があった。
真んには、湯気をてるきなカレーの鍋。 それを取り囲むように、満面の笑みを浮かべた私と、陽菜と、奏太の姿。 背景には、とりどりのと、青い空が力い致で描かれていた。
「これね、学の図のに描いたの。先が、すっごく温かいだねって褒めてくれたんだ!」
胸の奥が、ツンとくなった。
「まあ……本当に素敵ね」
「これ、蔵庫に貼ってもいい?」
「もちろんよ。番目つところに貼りましょう」
私がマスキングテープで絵を蔵庫の扉に留めると、奏太は嬉しそうにびねた。
その、カウンターのに置いてあった私のスマホが、く震えた。
画面に表示されたメッセージの通。 直からだった。
『母さんが先週倒れて、介護の認定を受けることになった。俺の取りじゃ、施設に入れるもない。千恵、頼むから度実に来てくれないか。母さんもおに謝りたいって言ってるんだ。頼む、助けてくれ』
画面の文字を、私は何のもかさずに眺めた。
介護。施設。お。 あの親子が今直面している困難は、かつて私という防波堤がしたことで、すべて見ない振りを決め込んでいた現実そのものだ。
域包括支援センターにけばいい。 ケアマネジャーに相談すればいい。
親の面倒を見るのは息子の責任であり、政の窓はいくらでもある。
のを搾取し尽くそうとした元夫のために、私が差し伸べるなど、爪の先ほども残っていない。