"追放された妻と「離婚しないで」と泣く愛人" 第12話
と吐き捨てる。
そして今度は、かつてゴミ箱に絵を捨てた奏太を、「褒めてやるから」と餌にして私を釣りげようとする。
していないのだ。 誰も。 美優の産んだ赤ん坊も、陽菜も、奏太も、そして私のことも。
この男がしているのは、誰にも文句を言われず、事も育児も介護もすべてに丸投げし、自分だけが国のの主として踏ん反り返っていられる、そのっぺらい「居の良さ」だけなのだ。
私は画面を見つめたまま、言だけ送った。
『お断りします。度と連絡してこないでください』
送信ボタンを押した直、スマホが激しく鳴り響いた。 直からの着信だった。
私は迷わず、拒否ボタンを押した。
「お母さん?」
スケッチブックから顔をげた奏太が、議そうに私を見ていた。 に持った緑の鉛が、さく揺れている。
「……誰からのお話?」
「なんでもないわよ」
私は微笑み、奏太のを撫でた。
「営業の話。もうかかってこないから、して描いていいのよ」
奏太はしたように笑い、再びに向き直った。 画用のには、緑のきなと、そので笑う女の子と男の子の絵が描かれていた。
父親の姿は、最初からどこにもなかった。
子供は、がっている以に、すべてを正確に理解しているのだ。
翌、曜の昼がり。
私は会社の昼休み、くの公園のベンチでサンドイッチをべていた。
広告
のがよく、々の葉がさらさらと音をてている。
スマホが鳴った。 表示されたのは、直の実の固定話の番号だった。
瞬、無しようかとった。 けれど、ここで逃げ続ければ、あの親子は学や職にまで押しかけてきかねない。 決着をつけるべきだ。
私は通話ボタンを押し、録音を始した。
「……もしもし、です」
『ああ、千恵さん! やっと繋がったわ!』
受話器の向こうから聞こえてきたのは、義母の、猫撫で声のようなずった声だった。 昨までの、私を見しきっていた酷な響きは、自然なほど消え失せていた。
『直から聞いたわよ。あなた、ちょっとを張っているみたいね。でもね、夫婦なんて喧嘩して当たりなのよ。って固まるって言うじゃない?』
喉の奥から、乾いた笑いがこみげてきそうになるのを必に堪えた。
「って固まる、ですか。お義母さん、私のこと『男児も産めない役たず』って追いしましたよね」
『まあ、千恵さんたら、昔のことをいつまでも根に持って!』
昔のこと? たったのことだ。
『あれはね、直が美優さんなんていう気な娘に騙されてたから、私もつい気がっていたのよ。あんな世らずの娘、うちの嫁にふさわしくないって、最初から分かってたの。やっぱり、文句つ言わずに私に仕えてくれた千恵さんじゃなきゃダメねって、昨の夜も直と話していたところなのよ』
「仕えてくれた、ですか」
広告
私は淡々と言葉を返した。
「美優さんと、赤ちゃんのことはどうされるんですか?」
義母は、話でフンとを鳴らした。
『あんな恩らずの娘、放っておけばいいのよ! の敷居を跨ぐ資格なんてないわ! でもね、あの子はの血を引いているんだから、満が過ぎたら、庭裁判所を使ってでも引き取る続きをするつもりよ。直の料から養育費なんて取られたらたまらないもの。元で育てた方ががりでしょ?』
がり。 命を、赤ん坊を、まるで古の維持費のように語る。
『そこでね、千恵さん。あなたにとっても、すごくいい提案があるの』
義母の声が、興奮で微かに弾んだ。 自分がいついた「最の妙案」を披したくてたまらない、という調子だった。
『あなたがに戻ってきてくれたら、赤ちゃんの面倒も、陽菜ちゃんや奏太と緒に見られるでしょう? あなた、子供を育てるのは慣れてるものね。それに、美優さんには養育費を払わない代わりに、しっかりで働かせて、これまでの迷惑料として毎いくらかに入れさせるように直から請求させるわ。美優さんがで稼いで、あなたがで事と私の世話をして、直は会社でしっかり働く……どう? 完璧じゃない!』
を疑った。
全の毛穴がき、たい汗が噴きす。