"追放された妻と「離婚しないで」と泣く愛人" 第11話
「直は、止めなかったの?」
「止めるどころか、母さんの横で頷いてましたよ。『俺だって、こんな理屈っぽい女と暮らすために婚したわけじゃない』って……」
美優はそこで、さくをすすった。
「その瞬、私ので何かが完全に終わりました。もう、このたちに何を言っても無駄なんだって。私、そので警察を呼びました」
「警察を?」
「はい。『元交際相とその母親が押し掛けてきて、乳児を連れろうとしている』って、エントランスの防犯カメラので通報しました。パトカーのサイレンが聞こえた瞬、とも慌てて逃げていきましたよ。みっともない背でした」
胸の奥が、すっと軽くなるような覚があった。
美優は、私がかけてもできなかったことを、たった数でやり遂げたのだ。 世体や慮を捨て、制度と部の力を使って、あの親子を真っ正面から拒絶した。
「千恵さん」
美優が、静かに言った。
「私、もう婚を止めてくれなんて言いません。弁護士をてて、認の続きと養育費の請求をします。度と、あの子をあのたちには会わせません」
「……そう」
「ごめんなさい。私、千恵さんから夫を奪ったつもりでいました。でも、奪ったのは幸せなんかじゃなくて、底なしの沼だったんですね」
「ええ。沼よ。く気づいてよかったわね」
私はそれだけ言うと、通話を切った。
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美優に対する同はない。 彼女が私の庭を壊すきっかけを作った事実は、消えはしない。 けれど、あの女が沼からいしたことで、直と義母の逃げは完全に塞がれた。
がに入れたはずの「完璧な族」は、誰として元に残らなかったのだ。
そのの夜、過ぎ。
子供たちと夕を終え、陽菜が学の宿題を広げ、奏太がリビングの絨毯のでしいスケッチブックに鉛をらせていた。
昨のような張り詰めた恐怖は、子供たちの顔から消えかけていた。 折、テレビのアニメを見ながら笑い声が漏れる。
その平穏を切り裂くように、私のスマホが震えた。
直からだった。 今度は話ではなく、文のメッセージだった。
画面をいた瞬、あまりの気悪さに背筋が凍りついた。
『千恵、元気にしてるか? さっきまでで々考えてたんだが、俺たち、やっぱり静になるべきだとう。 美優のことは、俺も軽率だったと反省してる。あいつは若すぎて、族を持つ覚悟が全然できてなかった。 やっぱり、俺を支えてくれたのはおだけだ。 母さんも、さっきで泣いてたよ。「やっぱり千恵さんが番気が利く嫁だった」って。 陽菜や奏太にも、寂しいいをさせて悪かったとってる。 子供たちのためにも、やり直さないか? 今ならまだ、婚届をさずに元に戻せる。
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週末、で久しぶりに美いものでもべにこう』
吐き気を催すほどの、勝さだった。
美優に拒絶され、警察を呼ばれ、もも失いかけた途端、何事もなかったかのように「元の都のいい妻」を呼び戻そうとする。
反省? 覚悟? どのが言っているのだろう。
昨まで「のババア」「げのない女」と罵り、歳の娘を赤ん坊の世話係としてこき使おうとしていた男が。
私は指先をかし、く返信を打った。
『美優さんが産んだ男の子は、どうするつもりですか?』
すぐに既読がついた。 数分、返ってきた文面に、私はわず笑を漏らした。
『あの子は美優に育てさせればいい。 認はするが、養育費は最限の額を々振り込むだけに留める。 母さんにも言ったんだが、元に引き取って育てるのは現実じゃないって納得させた。 あんなのかかる赤ん坊の世話で千恵に苦労をかけたくないしな。 俺たちには、陽菜と奏太がいる。 奏太の絵のことも、これからはもっと褒めてやるよ。 だから、戻ってきてくれないか?』
文字を追うごとに、りを通り越して、憐れみすら湧いてきた。
この男にとって、子供とは何なのだろう。
あれほど「本物の跡取り」「の希望」と崇め奉り、奏太を否定してまでに入れた男児を、歓が言うことを聞かないと分かった瞬に、あっさりと切り捨てる。
「最限のを払って母親に押し付ければいい」