みかん小説
本棚

"追放された妻と「離婚しないで」と泣く愛人" 第8話

会社の与担当部署に通がきますから、そのつもりで」

『お、おい! 待て! なんで俺がを払わなきゃいけないんだよ! てったのはおだろ! 俺は被害者だぞ!』

「被害者?」

わず、元にたい笑みが浮かんだ。

「倫相に子供を産ませ、歳の息子の描いた絵をゴミ箱に捨てて、夜に妻子をから叩きした男が、被害者?」

『あれは……あれは母さんがカッとなって言っただけで、俺は……!』

「言い訳は、裁判所でどうぞ。それから、美優さんの産院の費用ですが、円たりとも私には関係ありません。あなたのポケットマネーから、どうぞご自由にお支払いください」

『千恵! おい千恵!!』

通話を切ると、内の静寂が戻ってきた。

向かいの席にいた若い女性客が、私の鬼気迫る表に気づいたのか、気まずそうに目を逸らした。 私はアイスコーヒーのストローをくわえ、く息を吐きした。

震えていたのは、りのせいだけじゃない。 、度も逆らえなかった「夫」という絶対なに、初めて法な鉄槌をしたことに対する、激しい興奮のせいだった。

ざまあみなさい。

ので、黒いが静かに笑った。 けれど、これで終わりではない。

あの男が、に困ったに次に何をするか。 私はその醜悪さを、まだ過評価していた。

そのの午過ぎ。

私のスマホが、激しく震えた。

広告

画面には、陽菜が通う学の話番号が表示されていた。

嫌な予がして、臓がねがる。

「はい、です!」

『あ、陽菜ちゃんの保護者様でしょうか。教の川井と申します』

話の向こうの教先の声は、ひどく緊張していた。

『今、のにですね……ご主様とおっしゃる男性が来られておりまして』

から血の気が引いていくのが分かった。

「……直が?」

『ええ。『娘に事な用があるから、今すぐからせ』とかなりい調でおっしゃいまして。今朝、お母様から『父親による接触の恐れがあるため引き渡さないでほしい』とご連絡をいただいておりましたので、現、陽菜ちゃんは職員で待させておりますが……』

背から、鳴り声のようなものが微かに漏れ聞こえてきた。

「すぐにきます! 絶対に、絶対に陽菜をのにさないでください!」

私は荷物をひったくるようにまとめ、った。

ファミレスをびし、タクシーを拾う。 「学まで、急いでください!」 運転に告げる声が裏返った。

窓のの景が流れていく。 胃の底が激しく波打ち、吐き気がこみげてくる。

あの男は、私の警告を無した。 それどころか、を毟り取るために、歳の子供を質に取ろうとしたのだ。

学の正にタクシーが滑り込んだ、の脇にはすでに数の保護者がを止め、異様な様子で巻きに見ていた。

広告

の内側には、腕を組んだ教先と、若い男性担任教諭。 そしての側で、顔を真っ赤にしてフェンスを蹴りつけている直の姿があった。

「娘に会わせろって言ってんだろ! 親権は俺にもあるんだよ! 学が勝に親子の面会を邪魔していいとってんのか!」

スーツのネクタイを緩め、髪を振り乱した直の姿は、どこからどう見ても異常者だった。

「直!!」

私はタクシーをびり、叫んだ。

直がバッと振り返る。 その目は血り、元が歪んでいた。

「千恵! てめえ、学に何吹き込みやがった!」

股で私に詰め寄ろうとする直のに、からてきた担任教諭が割って入った。

「お父さん、やめてください! 所迷惑です、警察を呼びますよ!」

「警察だと!? 俺は自分の娘に話があるだけだ! 陽菜を呼べ! 陽菜に言えば、千恵だって言うことを聞くんだよ!」

その言葉を聞いた瞬、私のので何かが完全に弾けんだ。

「陽菜を、何だとってるの!」

私は担任教諭の横をすり抜け、直の目のに踏み込んだ。 周囲の保護者たちのざわめきなど、に入らなかった。

「自分の活費がりなくなったからって、子供を巻き込む気!? 恥ずかしくないの!? 親戚に男児がまれたって見栄を張るために、歳の娘を脅しに来るなんて、のやることじゃない!」

「な……っ!」

直が怯んだ。

私が公衆の面で、ここまで声を張りげて自分を罵倒するなど、で度もなかったからだ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: