"追放された妻と「離婚しないで」と泣く愛人" 第5話
「美優さんから聞いたわ。陽菜を退院の赤ちゃんの世話に通わせるつもりなんですって?」
話の向こうが瞬、息を呑んだ。 だが、すぐにき直ったような、苛ちの混じった声が返ってきた。
『はあ!? 美優のやつ、余計なことチクりやがって……! 別にいいだろそれくらい! 陽菜にとっても血の繋がった弟なんだぞ? 姉貴が赤ん坊の面倒見るなんて、どこのでもやってることだろ!』
「昨、何て言ったか忘れたの?」
私は言葉を遮った。
「『の男じゃないけない血はいらない』って、奏太のスケッチブックをゴミ箱に捨てたのは誰? 『もうこのに居所はない』って、子供ごと私たちを追いしたのは誰よ」
『それとこれとは話が別だろ! 陽菜は分別がつく歳だし、母さんも腰が痛いんだから、ちょっとくらい伝わせたって減るもんじゃないだろ!』
減るもんじゃない。 この男にとって、歳の娘のとは、減ることのない無料の消耗品なのだ。
「絶対に渡さないわ」
私は言い放った。
「今、学に連絡して、あなたや義母が陽菜に接触しようとしたら即座に通報するように配します。今、子供たちに関することはすべて弁護士を通してください。直接子供に連絡したら、接禁止命令の申してをいます」
『おい千恵! ふざけんなよ! 俺は父親だぞ!? 親権だって——』
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「親権を主張する気なら、裁判所でどうぞ。あなたが昨、子供たちので言い放った暴言、全部録音してありますから」
『……は?』
「あなたが浮気相に貢ぐために、子供たちの学資保険の積座から勝に引きした履歴も、全部持っています」
直の息が止まる音がした。
「じゃあ、類の準備ができたら弁護士から連絡させますので」
『ま、待てよ千恵! おい!』
通話を切ると同に、着信拒否の設定をした。
の震えは、もう止まっていた。 戦う覚悟を決めたのは、驚くほど静かなものだ。
そのの夕方。
役所で民票の閲覧制限の続きと、児童当の振込先変更を済ませて真理子のマンションに戻る途、再び見らぬ番号からショートメッセージが届いた。
美優からだった。
い文面をスクロールした瞬、私のが止まった。
『千恵さん、さっき直さんがお義母さんに鳴られてました。陽菜ちゃんが伝いに来ないって聞いて、お義母さんがこう言ったんです。
「陽菜ちゃんが来なくても丈夫よ。お宮参りが済んだら、あんたをもっと楽にさせてあげる別のがあるから」って。
直さんも「ああ、あれか」って笑ってました。 で、何を企んでるんですか? 私、怖くてたまりません』
たいが、ビルのを吹き抜けていく。
陽菜が来なくても、楽になる別の。
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直と義母の、あの気悪い自信に満ちた顔が脳裏に蘇る。 あのは、まだ何かを隠している。 私と子供たちを切り捨て、美優を囲い込んだその裏で、さらに誰かを犠牲にする算段をしているのだ。
スマホを握りしめたまま、私は暗くなり始めた京の空を見げた。
何があっても、絶対に渡さない。 あいつらが描いている都のいい獄のシナリオを、私自ので、々に叩き潰してやる。
「お宮参りが済んだら、もっと楽にさせてあげる別のがある」
美優から届いたそのメッセージを、私は何度もスクロールした。
画面の青いが、夕暮れの暗い駅通りに落ちる。 き交う通勤客の音。 スーパーの袋をげた母親たちの笑い声。
常の音ので、私の指先だけが氷のようにたくなっていた。
直と義母が、何を企んでいるのか。 あのにいた私には、嫌というほど像がついた。
あのが言う「別の」。 それはいつだって、自分たち以の誰かに痛みを押し付け、自分たちだけが涼しい顔で甘い汁を吸うための抜けのことだ。
その夜、子供たちを寝かしつけた、美優から再び話がかかってきた。
今度は泣いていなかった。 けれど、声の震えは昼よりもずっとかった。
「……千恵さん、聞いてくれますか」
産院の個のドアを気にしているのか、押し殺した囁き声だった。
「さっき、直さんがまた病に来たんです。お義母さんが持ってきた、親戚用の内祝いのカタログを持って」