"23年尽くした妻の追放✕四十九日の愛人親子" 第11話
「お義父さん、首を横に振ったの。そして、泣いてた」
記憶のの義父が、途切れ途切れに発した言葉。 の、ショックのあまり記憶の底に封じ込めていたその言が、今、鮮に蘇ってきた。
『若い頃、私はあのを止められなかった。……今さらおに、残ってくれと頼む資格なんて、私にはこれっぽっちもないんだよ』
美が、息を呑んだ。
「恵子……それ」
湯呑みを握る私の指先が、さく震え始めた。
あの言葉は、拒絶ではなかった。 「てけ」という酷な宣告ではなかったのだ。
義父はっていた。 自分がねば、健司と子が私をどう扱うか。 そして、私が「義父への恩義」という見えない鎖に縛られて、あのに搾取され続けることを、誰よりも恐れていたのだ。
『残っちゃいけない』
それは、義父が遺した、私をあのから解き放つための、最の祈りだった。
臓の奥で、23たく固まっていた何かが、音をてて砕け散った。 しみではない。 悔でもない。
全の毛穴がくような、恐ろしいほどの覚が、私の体を満たしていった。
私は顔をげ、美の目をまっすぐに見据えた。
「美さん」
「……何?」
「、親戚が集まるの。お義母さんが、私を呼び戻すために、親戚ので恥をかかせて引き摺り戻そうとしてる」
私の唇から、静かな笑みがこぼれた。
「ってくるわ。
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あので、全部終わらせるために」
法のときと同じ、線の匂いがかすかに残る座敷だった。
座には、親戚の叔父たちが神妙な顔で座っていた。 その正面で、義母の子がハンカチを目元に当て、わざとらしく肩を震わせている。
「……義父さんがくなってまだが浅いっていうのに、恵子さんは勝にてってしまって。毎のご飯も、の掃除も全部放りして……そのくせ、健司にを払えって脅してくるんです」
隣に座る夫は、腕を組み、嫌そうに畳を睨みつけていた。 私を呼びすために送ってきたメッセージには、『の鍵と通帳を返せ。おが勝に持ちしたのを返済するまで、婚には応じない』とかれていた。
「恵子さん、本当なのかい? 男の嫁が、親の法の直にを捨てるなんて、世様に対して示しがつかないよ」
叔父のが、苦々しい調で私を咎めた。
私の隣には、付き添ってくれた美が静かに座っていた。 私は取り乱すこともなく、膝のに置いたバッグからスマートフォンを取りした。 画面をき、親戚たちのの座卓に滑らせる。
「の夜、親戚の皆様がお帰りになった直のことです」
私の平坦な声が、静まり返った座敷に落ちた。
「健司さんが、見らぬ女性とお子さんをこのに連れてきました。
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そして、私の目のに婚届を置き、今夜にてけと命じられたんです」
叔父たちが怪訝そうに画面を覗き込んだ。 そこには、あのの夜に夫から送られてきたメッセージが表示されていた。
『の朝、いつもの買いし用のカード置いていくのを忘れるなよ。おがてっても、の活が止まるわけじゃないんだからな』
「……なんだ、これは」
叔父の眉がねがった。
「健司、お、恵子さんを追いしたそのに、買いし用のカードだけ置いていけと求したのか?」
「ち、違いますよ!」
夫の顔が朱に染まった。
「こいつが普段から計を牛ってたから、活を維持するために当然のことを言っただけで……!」
「私のパート代から毎引き落とされていたカードです。活費のほとんどを私が負担していた証拠の細も、すべてここにあります」
私が通帳のコピーを並べると、義母が慌てて割って入った。
「そ、そんな古い話はどうでもいいのよ! 問題は、あんたが健司を騙して――」
そのとき、玄関の引き戸が、ガラガラと激しい音をてていた。
廊を急ぎで歩いてくるヒールの音。 襖が乱暴にけ放たれた。
っていたのは、理恵だった。 息を切らし、にはクリアファイルを握りしめている。 親戚たちがぎょっとして息を呑んだ。
「……理恵さん!? なんであんたがここに!」
義母が甲い鳴をあげた。
理恵は親戚たちの線など目に入らない様子で、夫のに股で歩み寄った。 元のファイルを、夫の胸元へ叩きつける。