"23年尽くした妻の追放✕四十九日の愛人親子" 第10話
子は言葉に詰まり、それから、言い訳を絞りすように捲してた。
『健司が……健司があたしのことまで騙してたのよ! 借があるなんてらなかったの! あたしまで警察に捕まるかもしれないのよ! もう、誰を頼ればいいか分からないの……!』
自分の保。 それだけだった。
私を傷つけたことへの悔悟など、欠片もしなかった。 ただ、自分が窮に陥ったから、かつて便利に使っていた具を元に戻したい。 それだけの話だった。
「……お義母さん」
私は静かに、しかし度と覆らない温度で言葉を継いだ。
「私はもう、あなたの族ではありません」
『そんなこと言わないでよ! 23も緒に暮らしたじゃないの! あんた、昔からこういう揉め事を片付けるのが番得だったでしょう!? 族の危なのよ、頼むから――』
「の朝、役所の域包括支援センターに話してください」
子の懇願を、私はたく遮った。
「暮らしの齢者向けの相談窓があります。介護認定の申請や、配サービスの配も、役所の職員さんが教えてくれますから。これからはご自の力で、政に相談してきていってください」
『恵子さん! 待って、恵子さ――』
私は通話を切り、今度こそ固定話の番号を着信拒否に設定した。
スマートフォンの画面が暗くなり、台所に静寂が戻った。
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リビングから、美が温かいほうじ茶の入った湯呑みをつ持って入ってきた。
「……義母さんから?」
「うん」
私は湯呑みを受け取り、両で包み込んだ。 温かい陶器の触が、張っていた指先をしずつ解いていく。
「虫のいい話よね。追いすときはあんなに威張り散らしておいて、困ったら『戻ってこい』だなんて」
美は呆れたように首を振り、私の向かいの子に腰掛けた。 そして、湯呑みの湯気越しに、真剣な目を向けてきた。
「ねえ、恵子。ずっと聞きたかったんだけど……あんた、どうして23も、あのをてかなかったの?」
胸の奥の、番い所を突かれた気がした。
「健司さんのこと、してたわけじゃないんでしょ? 浮気だって、借癖だって、もっと昔から気づいてたはずじゃない」
「……うん」
私は湯呑みの底を見つめた。 茶の面に、蛍灯のが揺れている。
「してなんかいなかったよ。そんな、もう数に消えてた」
「じゃあ、なんで?」
「お義父さんだよ」
喉の奥から、乾いた声が漏れた。
「あのでね、私をとして見てくれてたの、正雄さんだけだったの」
脳裏に、病で痩せ細っていった義父の姿が浮かんだ。 偏屈で、数がなくて、決して優しい言葉をかけるようなではなかった。 息子の始末に甘く、子のが儘を止められなかった、さのあるだった。
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それでも、私が夜遅くまで台所で残務処理をしていると、義父は静かに起きてきて、 「恵子さん、すまないね」と、缶コーヒーを本、私のに置いてくれるようなだった。
「私がをたら、お義父さんのの世話をするが誰もいなくなるって、そうってたの。あのをでなせるわけにはいかないって……それだけが、あのに踏みとどまる理由だった」
美は黙って私の話を聞いていた。
「でもね、美さん」
私は胸の奥に澱のように溜まっていた記憶を、ゆっくりと掘り起こした。
「お義父さんがくなる週、病院のベッドで、最に私ときりになったときのこと、今でもはっきり覚えてるの」
酸素マスクをつけた義父が、震えるで私の首を掴んだ。 骨と皮ばかりになったそのは、驚くほどかった。
『恵子さん。私がんだら、もうこのに残っちゃいけない』
掠れた声で、義父はそう言ったのだ。
当の私は、目のが真っ暗になった。 あんなにをにして尽くしてきたのに、最の最に、義父からも「てけ」と拒絶されたのだとい込んだ。 私はこのにとって、所詮は最までだったのだと、絶望に打ちひしがれた。
「私、あのとき本当にショックで……『私の病じゃ、りませんでしたか』って泣きそうになりながら聞いたの」
美がを乗りした。
「それで? 正雄さんはなんて言ったの?」
私は目を閉じ、あの病の消毒液の匂いと、義父の濡れた瞳をいした。