"夫の死後、最後のお別れすら奪われた私" 第13話
佳代は、自分の肩に乗せられた美のを、たく払いのけた。
「……やめてください」
「え?」 美が抜けな声を漏らした。
「やめて、美さん」 佳代の声は、驚くほど静かで、そしてかった。 「、私が妊娠したとき、あなたとご両親は何て言いましたか? 『どこの馬の骨ともれない女の腹にできた子なんて、佐藤の跡取りとは認めない』って。そう言って私を実から叩きしたのは、でもない、あなたたち佐藤じゃないですか」
部の空気が、瞬で凍りついた。 親戚の老格である叔父が、いたたまれなさそうに元を押さえる。
「私はね、健さんを許したことなんて度もありませんよ」 佳代は真っ直ぐに美を見つめ返した。 「息子がきくなって、父親の顔を見たいと言いしたから、会わせただけです。直が自分のルーツをる権利があるとったから、受け入れたんです。でも、私は佐藤に戻る気なんて輪際ない」
「な、何言ってるのよ、直くんのために……」
「直のため?」 佳代がで笑った。え切った、自嘲の笑みだった。 「あなたは直を利用して、自分がこのの実権を握りたいだけでしょ。兄の会社を乗っ取り、由美さんを追いして、都のいい操り形として私たちを呼び寄せた。……あの、葬儀の席で私を喪主の隣に座らせたのも、全部あなたの演じゃないですか」
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「ち、違うわよ! 私はお兄ちゃんの無を……!」
「健さんの無?」 佳代がちがった。 その華奢な体から、の孤独を背負ってきた女の凄まじい気迫がちっていた。
「健さんはね、最まで卑怯なでしたよ。私にも、直にも、そして何より……尽くしてきた由美さんに対しても」
佳代は私のに歩み寄り、畳のに両をついた。 く、をげた。
「由美さん。本当に、申し訳ありませんでした」
「佳代さん……」
「直の学費のこと、活支援のこと……私、健さんから『自分の独代の貯と、会社の部の当から面している』と聞かされていました。まさか、あなたが汗流して、お義父さんのの世話までしながら節約していたおだなんて……にもっていませんでした」
佳代の肩が、刻みに震えていた。
「っていたら、円たりとも受け取らなかった。息子の血肉に、の女性の血と涙が混ざっているなんて……母親として、耐えられない」
「母さん、もういいよ」 直が静かにちがり、佳代の肩を抱き寄せた。 そして、親戚同を見渡した。
「俺は、父の遺産を切放棄します。庭裁判所に相続放棄の申述を提する準備もめています。父から受け取った学費の分は、すでに分すぎるほどです。これ以、佐藤の名にも、財産にも関わる気はありません」
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直の言葉に、親戚たちのざわめきは完全に止まった。 美の拠ってつが、音をてて崩壊していた。
「嘘よ……嘘でしょ、直くん……! 跡取りになるって言ったじゃない! 私が全部配してあげるって……!」 美が畳のをうようにして直の元に縋りつこうとする。
「叔母さん」 直は淡に見ろした。 「みっともないですよ。父の骨をダシにして、のを引っ掻き回すのは、もうやめてください」
直は佳代のを取り、踵を返した。 引き戸をけ、がていく音が、静まり返った廊にざかっていく。
残された。 美は膝をついたまま、髪を振り乱して荒い息を吐いていた。 親戚たちは誰として美を庇おうとはせず、汚いものを見るように線を逸らしていた。
完膚なきまでの敗。 だが、私の胸の奥に、達成など欠片もなかった。
なぜなら、まだ『最もい刀』が、ここに残されていたからだ。
「……美穂」
私の声に、部の隅でさく丸まっていた娘が、びくりと肩をねさせた。
美穂は、ずっと俯いていた。 佳代の告も、直の決絶も、すべてをにしながら、膝ので握りしめたバッグを抱きしめて震えていた。
「美穂、そこにいなさい」
私が歩み寄ると、美穂は怯えた子犬のようにを縮めた。 「お母さん……」
「あなたが持っているんでしょう」
私は娘の目のにった。 「健さんが、病院でいたもの。直さんに渡したあのメモとは別の……あなたに託したものを」