"夫の死後、最後のお別れすら奪われた私" 第11話
美が叫び、私に掴みかかろうと腕を伸ばした。 「それは佐藤のよ! お兄ちゃんが作ったなんだから、佐藤のが管理するのが筋でしょうが! のあんたが触るんじゃないわよ!」
「は、あなたよ」
私のく鋭い言に、美のきがピタリと止まった。
「私は法定配偶者です。こののどころが務の隠し資産であれ、夫婦の共財産であれ、あなたに円の管理権もない。そして――」
私はバッグを固く抱え直した。
「あなたが健さんのみを握って、実の権利を巻きげようとしていたことも、すべてこの数字が証してくれるわ」
「な……!」 美の顔が、りと恐怖で真っ赤に染まった。 「何言ってるのよ、この棒猫が! 親戚に言いふらしてやるわ! 夫がんだ途端にに押し入ってを盗んだって! 警察呼んでやるから!」
「呼びなさいよ」 私はたく言い放った。 「警察が来たら、この隠し座の履歴と、あなたが健さんを禁同然にしていた病院の記録を、全部提するだけですから」
美が絶句した。 言葉を失い、肩で息をしながら、ただ私を睨みつけることしかできない。
私は美の横をすり抜け、玄関へと歩きした。 美穂が泣きながら私のを追ってくる。
玄関をて、たいのにを踏みした瞬。 背で、美が狂ったように叫んだ。
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「覚えてなさいよ! 今週末、実でお兄ちゃんの初の法をやるからね! 親族全員ので、あんたの inheritance(相続)の放棄にサインさせてやるわ! お兄ちゃんの骨はね、佐藤の墓に入れるの! あんたなんかに、粒だって渡さないんだから!!」
ピシャリと、玄関のドアが閉まる轟音が響いた。
そのの夕方。 古びたアパートに戻った私の郵便受けに、枚の連絡票が入っていた。
差:赤羽法律事務所(美代理) 種類:内容証郵便(配達証付き)
郵便局の窓へ向かい、受け取ったい分い封筒。 部のちゃぶ台ので封を切ると、そこには徹な活字が並んでいた。
『貴殿は過にわたり、被相続・佐藤健との同居義務を放棄し、悪の遺棄に及んだ。よって、佐藤の財産に対する切の相続権を放棄することを求する。今週末の親族会議において、同封の承諾に実印を捺印の、提されたし。応じぬは、損害賠償請求訴訟を提起する』
脅迫状だった。 親族を抱き込み、法な識のない主婦を脅して、すべてを無文で追いすための、最通告。
元には、夫が遺したの沈黙のカルテ。 男に横流しされていた千百万円の通帳。 そして、この内容証郵便。
私は、ちゃぶ台のに置かれた類を静かに見つめた。 胸の奥で、カチリと、何かがたく噛みう音がした。
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涙は、もうなかった。 恐れも、迷いも、完全に蒸発していた。
私はスマートフォンを取りし、画面をタップした。 発信先は、内の法律相談センター。
「もしもし。遺産分割と、姻族関係の清算について、至急相談したいのですが」
窓のでは、の夜がいを広げていた。 の欺瞞に、完璧な終止符を打つための、私の戦いが始まろうとしていた。
たいが、実の古い引き戸をガタガタと揺らしていた。
初の法という名目で招集された、佐藤の親族会議。 畳の広いには、ほどの親戚が座布団のに並んでいた。 夫の叔父、叔母、従兄弟たち。 その誰もが、私が玄関をがった瞬、あからさまに線を伏せるか、あるいは氷のようにたい侮蔑の目を向けてきた。
「よく来られたわね、かましくも」
座の真んに陣取った義妹の美が、腕を組んで私を見ろした。 その隣には、黒いスーツを着た代半ばの男。先、内容証郵便の差欄に名のあった赤羽弁護士だった。
そして、美が用した『親族席』の最列。 そこには、妻の佳代と、息子の直が座らされていた。 佳代は居悪そうに膝ので指を絡ませ、直は能面のようなたい横顔での点を見つめている。
「皆様、お揃いですね」 美がわざとらしく厳かに声を張りげた。
「今は、くなった兄・健の初です。本来なら内だけで静かに送るべきところですが、ここにいる佐藤由美さんが、も別居して兄を放置した挙句、くなった途端に実に押し入って通帳を持ちるという暴挙にました」