みかん小説
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"夫の死後、最後のお別れすら奪われた私" 第9話

わせて……百万円くらいありました」

百、万円。

喉の奥が引き攣れた。 呼吸が止まりそうだった。

直が学に入った期。 。 ちょうど、義父が脳梗塞で倒れ、半麻痺になって介護5の認定を受けただ。

義父の介護用ベッドを入れるために、実の畳をフローリングに改装する費用がりなくて、私はスーパーのパートのシフトを週から週に増やした。 腱鞘炎で首が腫れがり、夜に湿布を貼り替えながら、痛みに涙を流していた。 その横で、夫は「すまないね、務の売が厳しくて、親父のも底をつきそうなんだ」と申し訳なさそうにをげていた。

その裏で。 その同じ期に。 夫は、私に隠していた息子に、百万円ものをポンと渡していた?

「……らなかった」 絞りすような声が、自分の喉から漏れた。 「私、何つ……らなかったわ」

「俺も……」 直は拳を握りしめ、テーブルに押し当てていた。 「俺も、父の会社の余剰からているものだとっていました。父が、の庭への責任として、自分のおから面してくれているんだと。……でも、美穂ちゃんから聞きました。あのが、由美さんのパート代と節約でギリギリ回っていたこと。おじいさんの介護を、由美さんがで背負っていたこと……」

直の瞳に、激しい悔のが浮かんでいた。

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「俺は、父に騙されていたんです。母を傷つけ、由美さんからを奪って、自分だけ『いい父親』の顔をしていた……あの男の卑怯さに、俺も加担していたんです」

直の言葉は、真っ直ぐだった。 この青を責めることはできなかった。 彼もまた、放置された末に、都よく父親の罪滅ぼしの具に使われた被害者なのだ。

すべての元凶は、ただ。 自分をしてくれるを裏切り、誰も傷つけたくないという顔をしながら、全員を最も残酷な形で傷つけた、あの男。

「直さん」 私はちがった。 の震えは、完全に止まっていた。 「ありがとう。全部話してくれて」

「由美さん、俺……何かできることがあれば……」

「いいえ。これは、私とあの男の、の決算だから」

私は伝票をに取り、レジへと向かった。 胸の奥を焼き尽くしていたしみは、跡形もなく消えっていた。 そこに残っていたのは、ただ徹な、絶対な覚悟だけだった。

喫茶をた私は、そので美穂の居へと向かった。

美穂が夫と暮らす、駅から徒歩分の築マンション。 インターホンを鳴らすと、モニター越しに美穂の怯えたような顔が映った。 「……お母さん?」

解錠の音が鳴り、エレベーターで階へがる。 玄関のドアをけた美穂は、目のに濃い隈を作り、ひどく窶れていた。

「お母さん、昨は……本当にごめんなさい……」

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「靴を履きなさい、美穂」 私は娘の謝罪を遮った。

「え……?」

「実へくわよ。あなたの昔の部の鍵、まだ持っているでしょう」

美穂の顔から、さっと血の気が引いた。

「じ、実……? でも、あそこは今、あけみおばさんが鍵を持ってて……」

「あなたが鍵を持ってるのはってるわ。美穂の部のベランダ側の窓、昔からクレセント錠が甘かったでしょう。どうしても入れないなら、警察を呼んで解錠業者を入れるだけよ。あそこはまだ、私と健さんの共名義のなんだから」

「お母さん、待ってよ……! 何をする気なの?」

「確かめにくのよ」 私は娘の腕を掴んだ。 く、けれど決して乱暴ではない力で。 「あなたのお父さんが、美穂のタンスの奥に何を隠したのか。の嘘の、本当のをね」

美穂は唇を震わせ、抵抗するのを諦めたように、さな鍵を取りした。

、私が追いされた佐藤の実。 黒い瓦根の、階建ての本。

庭の入れをするがいなくなったせいで、私が切に育てていた薔薇のアーチは枯れ果て、雑が膝のさまで伸びていた。 扉をける乾いた音が、静かな宅に響く。

玄関の鍵穴には、美が勝に付け替えたしいシリンダー錠がっていた。 だが、勝の横、かつて美穂が使っていた階の奥の部。 美穂が震えるで差し込んだ鍵が、さな音をてて回った。

ぶりに踏み入れた、かつてのが。 空気は淀み、埃とカビの匂いがを突いた。

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