"夫の死後、最後のお別れすら奪われた私" 第3話
その無言の沈黙が、美のどんな罵倒よりもく、私の胸を抉った。 あの女はっているのだ。 私が何もらされずにを過ごしてきた、化のようなであることを。
そして、その隣に座る美穂。 私の娘。 美穂は、佳代の背に添えたをそうとしなかった。 私から目を逸らし、たださく震えている。
「美穂」
私は歩みようとした。 娘の腕を掴んで、どういうことなのか問い質したかった。 だが、その歩を踏みすに、式の隅からすっとの若い男がみてきた。
歳だろうか。 背がく、肩幅が広い。 仕てのいい黒のスーツを着たその男の目元と、い唇の形を見た瞬、私は息を呑んだ。
健さんだ。 代の初め、私と会った頃の健さんの顔が、そのままそこにっていた。
「……直、さん?」 私のから、美がにした名が漏れた。
男はち止まり、私に向かってく、度だけをげた。 敵はなかった。 けれど、そこには決して縮まることのない、徹なの距があった。
「お母さん」 男は、私の横を通り過ぎ、祭壇のの佳代の肩にを置いた。 「もうすぐ、お坊さんが来るよ。席に戻ろう」
「ええ……そうね」 佳代が掠れた声で応え、ちがった。
その景は、どこからどう見ても、つの完成された族だった。 んだ夫。 その最初の妻。
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そのにまれた、歳の派な男。 そして、その兄に寄り添う、私の娘。
私がかけて守ってきたはずの所に、私は最初からしていなかったかのように。 私の居所は、ミリも用されていなかった。
読経が始まっても、私は式の入りくの壁際にち尽くしていた。 親戚の誰も、私にパイプ子を勧めようとはしなかった。 美が親族たちに何を吹き込んだのかは、容易に像がついた。 『兄を裏切ってをていった悪妻』。 そう仕てげることで、この異常な席順を正当化しているのだ。
魚の乾いた音が、蓋骨の奥に直接響く。 線の煙が目に染みて、涙が滲んだ。 悔しいのか、しいのか、それともっているのか、自分でも分からなかった。 ただ、臓がの奥で鐘を打っていて、呼吸が浅く、苦しかった。
焼が始まった。 「親族の皆様からどうぞ」という葬儀社のスタッフの声。
最列から、佳代がった。 震えるで抹を摘み、額に掲げ、煙のに落とす。 次に、息子の直がみる。 そして、番目にったのは、美穂だった。
娘が、私の横を通り過ぎる。 私はわず、その黒い喪の袖にを伸ばした。
「美穂……」
指先が、娘のの布に触れた。 美穂はびくりとち止まり、青ざめた顔で私を見げた。 その目には、涙が溢れそうになっていた。
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「お母さん……お願いだから、今は……」 掠れ声だった。 周囲の親戚たちが、斉にこちらを振り返る。 美の鋭い線がんでくる。
「何よ、ゆみさん。焼の邪魔をしないでちょうだい」 美がわざとらしくきな声で言った。 「美穂ちゃんはね、佐藤の女として、ちゃんとお父さんを見送ろうとしてるのよ。部者は静かにしてなさい」
部者。 その言葉が、の奥で炸裂した。
美穂は私のを振りほどかなかった。 けれど、自らそのを引き抜くようにして、を向いた。 そして、焼台へとみ、をわせた。
私は、娘の背を見つめるしかなかった。 あの子のランドセルを背負わせたのも、をした夜にえピタを貼り替えたのも、反抗期にぶつかりいながらお弁当を作り続けたのも、全部私だ。 それなのに、あの子は今、私を見捨てて、あの族の側にっている。
焼が終わり、親戚たちが次々と式をていく。 私は最尾で、誰にもをげられることなく、ただっていた。 骨壺のにみることすら、許されなかった。 葬儀社のスタッフが申し訳なさそうに私を見て、さく会釈をした。彼らにも、異常な事態であることは分かっているのだろう。だが、喪主として類を提したのは美であり、費用の支払いを取り仕切っているのも美なのだ。
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「お引き取りください」 親族控のにった美が、ややかに言い放った。 「これ以ここにいられても、親戚の皆さんが迷惑するわ。